中国半導体ファウンドリーのSMIC、世界3位に躍進

AI要約

中国の半導体ファウンドリー大手、SMICが世界第3位に躍進したことが報じられた。

売上高シェアは6%で、TSMCやサムスンには及ばないものの初の3位入りとなった。

中国政府の後押しを受けて成長しているが、米国の制裁下で制限を受けている状況もある。

 香港の調査会社カウンターポイントリサーチによると、中国・中芯国際集成電路製造(SMIC)が世界第3位の半導体ファウンドリー(受託生産)へと躍進した。

 SMICの2024年1~3月期の売上高ベースのシェアが6%に上昇した。シェアは依然1桁台にとどまり、上位2社との差は大きいものの、同社が世界3位になるのはこれが初めて。米国の制裁下にある同社は、中国政府による後押しの恩恵を受けているようだ。

■ GlobalFoundriesとUMCを抜く

 24年1~3月期の各社のシェアを見ると、台湾積体電路製造(TSMC)が62%で首位。2位は、韓国サムスン電子のファウンドリー事業で、シェアは13%だった。

 これまでは、米グローバルファウンドリーズ(GlobalFoundries)と台湾・聯華電子(UMC)が3位と4位で推移してきた(ドイツStatistaのインフォグラフィックス)。だが24年1~3月期はSMICがこの2社を追い抜いた。

 SMICは、「CMOSイメージセンサー」「電源管理IC(集積回路)」「IoT(モノのインターネット)デバイス」「ディスプレードライバーIC」といったアプリケーションの需要回復を背景に売り上げを伸ばしたようだ。

 24年1~3月期におけるSMICの売上高は、17億5000万米ドル(約2700億円)で、前年同期から19.7%増加した。売上高の80%以上は中国の企業顧客からのものだった。英調査会社オムディアによると、中国は消費者向け電子機器製品の世界最大の「工場」であり、世界半導体の約50%を購入している。

■ 中国政府の後押し、米政府の輸出規制

 米国が中国に対する技術輸出規制を強化するなか、中国国内半導体産業における外国技術への依存を減らしたい考えの中国政府にとって、SMICは重要な存在だ。中国政府は、これまで自国の半導体産業に数千億元(数兆円)規模の補助金を投入してきた。

 しかし、同社は高度半導体を低コストで製造するために必要となる、西側諸国技術の入手に苦戦しているようだ。

 米CNBCによると、SMICは20年に米政府による先端半導体技術の輸出規制対象になった。現在、米国の企業がSMICに製品を販売するためにはあらかじめ米政府のライセンスを取得する必要があり、SMICは事実上、特定の米国製技術の入手が制限されている。

 米政府は、他国にも同様の制限を課すよう促している。オランダ政府はこれに応える形で輸出制限を導入した。7ナノメートル(nm)プロセスで半導体を製造するためには、オランダ・半導体製造装置大手ASMLが手がける極端紫外線(EUV)露光装置が必要になるといわれている。

■ SMICの高度半導体に驚かされる米政府

 だが、23年に発売された中国通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)のスマートフォン「Mate 60 Pro」にSMIC製の7nm半導体が搭載されていることが明らかになった。

 SMICの技術力は、TSMCやサムスン電子といった世界トップ企業の最先端半導体と比べて何世代か後れを取ると指摘される。一部報道では、SMICが規制導入前に米国などから入手した旧式装置を使って、7nm半導体を製造したと伝えている。

 それでも、米国の制裁下にありながら、高度半導体を製造できるSMICの能力は、驚きをもって受け止められている。