韓国経済の屋台骨「サムスン」が抱える「深刻な事態」…「異例の役員人事」のウラ側

AI要約

2024年1~3月期、韓国サムスン電子の半導体部門は5四半期ぶりに黒字転換し、需給の改善とDRAM需要の回復が寄与した。

しかし、AI用のHBM市場で後塵を拝しており、競合他社に追いつくために新たな取り組みを図っている。

韓国政府が3兆円の半導体産業支援策を発表し、サムスン電子の成長を後押しする。

韓国経済の屋台骨「サムスン」が抱える「深刻な事態」…「異例の役員人事」のウラ側

 2024年1~3月期、韓国サムスン電子の半導体部門の営業損益は、5四半期ぶりに黒字転換した。世界的なメモリー市況の下げ止まり、データセンター向けのDRAMなどの需要回復が黒字転換に寄与した形だ。

 ただ、同社のAI用の新型半導体開発の遅れは顕著だ。現在、AI分野で需要が急増の“広帯域幅メモリー(HBM)”市場で、競合のSKハイニックスが世界トップの地位にあり、サムスンは明らかに後塵を拝している。

 ただ、サムスン電子もじっとはしていない。巻き返しを図っている。5月21日、半導体部門のトップに全永鉉(ジョン・ヨンヒョン)副会長が就任した。

 このタイミングで半導体トップの交代はかなり異例との見方も多い。メモリー半導体事業などに精通する全副会長を部門トップに抜擢したところに、サムスン電子の危機感がにじみ出ている。

 5月23日、韓国政府は総額26兆ウォン(約3兆円)規模の半導体産業支援策を発表した。

 サムスン電子などの研究開発、生産体制の強化、インフラ整備を支援する。韓国政府にとっても、サムスン電子のAIチップ分野での出遅れは無視できない負の要素だ。同社がどのように半導体事業の成長を加速させるかに注目が集まる。

通常、サムスン電子は年末に役員人事を発表する。ただ、今回の半導体部門の役員交代のタイミングは異なった。いつも通りであれば若年の役員と交代することが多いのだが、今回、前任者よりもシニアな役員が後任に選ばれた。

 近年のサムスン電子の経営陣の入れ替えを見てもかなり異例だ。それだけ、同社の半導体事業は深刻な状況に直面しているということだろう。

 新たに半導体事業のトップに就任した全副会長は、サムスン電子のメモリー半導体事業の成長の立役者と評価されてきた。半導体産業に精通した経営のプロだ。それは、HBM市場でトップのシェアを走る、ライバルのSKハイニックスを追い上げるため必要なのだろう。

 HBMとは、DRAMを縦に積み重ね、データの転送速度を高めた新型のメモリーチップだ。台湾積体電路製造(TSMC)との格差が広がるファウンドリー事業に続き、HBM分野でもサムスン電子は期待したほど成果を実現できていない。