韓国、総選挙を終え日本との防衛交流拡大 影落とす前国防相の不正疑惑

AI要約

韓国海軍は自衛隊機への火器管制レーダー照射問題に対し、総選挙への影響を懸念して選挙前の再発防止策の合意を避け、関係正常化を模索。

日韓関係は徴用工訴訟やGSOMIA破棄通告などで悪化したが、申国防相は関係改善を強調。

韓国国内では海兵隊員殉職事故を巡る軍の不適切対応疑惑が尹政権の行方を左右する関心事となっている。

【ソウル=時吉達也】韓国海軍による自衛隊機への火器管制レーダー照射問題に対し、韓国側は今年4月の総選挙への影響を懸念して選挙前の再発防止策の合意を避け、今回のシンガポール会談で関係を正常化する道筋を描いてきた。ただ、国内では前国防相の在任当時の不正疑惑を巡り国防当局への不信感が高まっており、日韓の安全保障協力にも影を落としそうだ。

■一時はGSOMIA破棄を通告も

申源湜(シンウォンシク)国防相は1日の木原稔防衛相との会談後、韓国記者団に「これで韓国艦艇の安全が確保された」と成果を強調。「韓日、韓米日の安全保障協力をさらに発展させていく」と述べた。

2018年12月のレーダー照射は、いわゆる徴用工訴訟を巡る韓国最高裁判決(18年10月)から韓国政府による日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の一時破棄通告(19年8月)まで、日韓関係が急速に悪化した最中に発生した。

韓国政府はレーダー照射の事実を認めず、逆に自衛隊機が「低空脅威飛行」をしたと反論。当時の文在寅(ムンジェイン)政権が直後、自衛隊機のみを対象に、低空で接近した場合にレーダー照射などの強硬な対応をとる指針を作成していたことも判明した。文氏は今年5月に発表した回顧録でも「韓日関係を萎縮させた責任は日本政府にある」と振り返っている。

■軍の不適切対応が最大の関心事に

だが、日米韓協力を重視する尹錫悦(ユンソンニョル)政権が発足した22年以降は関係が改善。一時中断した自衛隊と韓国軍の幹部候補生同士の交流事業なども再開された。日韓関係筋は「総選挙が終われば日韓の防衛交流は一気に進む」との見方を示していた。

一方、韓国国内では、昨年発生した海兵隊員殉職事故を巡る軍の不適切対応を李鐘燮(イジョンソプ)前国防相らが隠蔽した疑惑が尹政権の行方を左右する最大の関心事として浮上する。革新陣営に慎重論の強い日本との防衛交流も、尹政権の国防政策を非難する材料に活用される可能性がある。