日本、レーダー照射問題の解明棚上げも…韓国との防衛協力優先 東アジアの安保環境厳しく

AI要約

木原稔防衛相と韓国の申源湜国防相は、海上自衛隊機への火器管制レーダー照射問題に関する再発防止策で合意した。

日本と韓国の間で照射を巡る主張の隔たりが大きかったが、防衛協力強化を優先して合意に至った。

日韓関係の改善や地域の安保課題解決に向けて、日本と韓国の防衛協力が重要である。

【シンガポール=小沢慶太】木原稔防衛相と韓国の申源湜(シンウォンシク)国防相は1日の会談で、韓国海軍による海上自衛隊機への火器管制レーダー照射問題を巡る再発防止策に合意した。日本としては、韓国側が照射を否定し、事実解明がなされないままの曖昧決着となるが、安全保障環境が厳しさを増す中、防衛協力強化を優先した形だ。

■不測の事態を回避

「(再発防止策で)海上自衛隊、韓国海軍も予期せぬ不測の事態が回避されることは歓迎すべきことだ」

木原氏は会談後、記者団に説明した。

日韓両国は昨年6月の防衛相会談で再発防止に向けた協議加速で一致した。だが、日本側と、照射を否定し、海自機が低空飛行で接近してきたとする韓国側の隔たりは大きく、協議は難航した。

今回の会談日程が固まったのも1日朝で、当局間の調整は会談直前まで続いた。再発防止策はレーダー照射と低空飛行への対策が柱で、双方の主張に配慮したといえる。

■関係良好なうちに懸案に区切り

事実解明を棚上げしたまま関係改善に踏み出すことで、日本国内での反発も予想される。自民党関係者は「韓国側が照射を認めないままでは、自衛隊と韓国軍の信頼関係構築は困難だ」と指摘する。自民内の保守派である木原氏としても韓国側が否定したままの決着には政治的リスクがある。

にもかかわらず、防衛交流の再開で合意したのは、北朝鮮が核・ミサイル開発を加速する中、関係良好な尹錫悦(ユンソンニョル)政権のうちに懸案に区切りをつけたいとの思いが政府内に強かったからだ。日韓両国の同盟国である米国の圧力もあった。

■日韓関係深化で地域の安保課題解決

日米韓3カ国は昨年12月に北朝鮮による弾道ミサイルの警戒情報を即時共有する仕組みの運用を始めるなど連携を強める。防衛省幹部によると、発射直後に日米が1発だと分析していたミサイルが、韓国の提供情報によって複数発だと判明したケースもある。

軍拡を推し進める中国は東・南シナ海で力による現状変更を試み、ウクライナに侵略したロシアとも連携する。今回の合意で日韓間の防衛協力を前に進めることで、東アジアの抑止力向上につなげられるかが課題になる。

「日韓関係の深化は地域の安保課題の解決を促進する」。木原氏は記者団に強調した。