「このチームで勝たれへんのかと…」甲子園、強打・大阪桐蔭“衝撃の完封負け”はなぜ起きた? 理想のフルスイングと現実との“ズレ”

AI要約

大阪桐蔭が夏の選手権で敗れ、低反発バットの影響を受けたことが明らかになった。

選手たちや指導者たちが低反発バットに対応する苦労や戦略を語っている。

同じルールの中でどんな野球を展開するか、マネジメントの難しさが浮かび上がっている。

「このチームで勝たれへんのかと…」甲子園、強打・大阪桐蔭“衝撃の完封負け”はなぜ起きた? 理想のフルスイングと現実との“ズレ”

 目を逸らしてはいけない敗戦、と言えるかもしれない。

 2度の春夏連覇を達成し、今大会も6年ぶりの夏の覇権を狙った強豪・大阪桐蔭が2回戦で敗れた。同校が夏の選手権で完封されたのは初めてだという事実が、この敗戦の衝撃を物語っている。

「選手たちとゲーム中も話しましたけれども、試合が終わって整理がついている部分もありますし、ついてない部分もある。冷静に振り返って話したいと思います」

 大阪桐蔭・西谷浩一監督が、努めて冷静さを保とうとしていたのが印象的だった。敗因を矢継ぎ早に質問されても表情を変えない指揮官の様子はいつも通りだったが、「しぶとく粘り強くをモットーにやってきましたけれども、最後の力及ばず、残念というか無念です」という言葉に悔しさが滲んでいた。

 これほど打てない大阪桐蔭を見たのは初めてかもしれない。大阪大会でも、準決勝の履正社戦こそ最高の試合運びを見せたが、5回戦、準々決勝、決勝戦と迫力に欠けた打線はこの夏の大阪桐蔭の象徴だった。

「記事読みましたよ。やっぱり、低反発の影響で追加点の長打が出ないです」

 大会1回戦の後、そう話したのは橋本翔太郎だ。西谷監督をグラウンドで支えるコーチである。橋本コーチが感想を述べてくれたのは、筆者が大阪大会後に書いた記事のことだ。大阪桐蔭の打線は活発だが、もう一本が出ないのはバットの影響もあると指摘した。

 投手の安全面を考慮して、この春のセンバツから導入された新基準の低反発バットは、全国の球児に新たな課題を突きつけている。今大会も19試合目までホームランが出なかったという事実が、このバットを扱う難しさを証明しているだろう。かつては5点差でもセーフティリードではないと言われた野球は消滅し、今大会はここまで、終盤で3点差以上の試合はひっくり返っていない。

 指導者たちが口を揃えるのは「フライを打つと失速する」という言葉だ。だから、低くて強い打球を打つ必要がある。

 下級生の頃からチームを引っ張って来た選手の一人、境亮陽はいう。

「低反発バットに対応するために必要だったのは、パワーをつけること。ロングヒットは出にくいので、低い打球を意識しながら、それが長打になるようにと心がけています」

 もっとも、大会に出場している指導者たちは低反発バットの影響を口にしたがらない。「みんな同じルールでやっていますから」。13日に敗れた智弁和歌山の中谷仁監督も、西谷監督も、判を押したように同じ言葉を口にした。

 その同じルールの中でどんな野球を展開していくかが重要ということだが、監督のマネジメントとして、難しさがあるのも事実だろう。バットが変わっても野球を変えずに戦うのか、それとも、多少なりとも、低反発バットを意識したような野球をするのか。