完全復活を期すヤクルト・奥川恭伸、原点の石川・星稜高時代 「負けたらもう明日がないって思ったら、不思議な力が出る」

AI要約

奥川恭伸投手が夏の高校野球時代の経験を振り返り、プレッシャーとの戦いから得た成長を語る。

甲子園での楽しいプレーを経て、現在のプロ野球での挑戦と復活に向けた思いを語る。

周囲への恩返しを胸に、改めて頑張り続ける奥川の姿が描かれる。

完全復活を期すヤクルト・奥川恭伸、原点の石川・星稜高時代 「負けたらもう明日がないって思ったら、不思議な力が出る」

◇記者コラム「Free Talking」

 夏の甲子園大会出場を懸けた戦いが各地でスタートした。3年生にとっては最後の夏。全国大会常連の強豪校には相手チームだけじゃなく、周囲の期待に応える重圧との戦いもある。ヤクルトの奥川恭伸投手(23)は石川県の名門・星稜高時代をこう振り返った。

 「周りが勝って当たり前(という空気)で、県大会はプレッシャーでした。相手が星稜だけを倒そうみたいな。だから、とんでもない秘策を仕掛けてきたりとか、捨て身でかかってくるから難しいんですよ。私立は学費が高い。顧問の先生、保護者も自分の時間を削ってくれていた。『勝って恩返し』と思ったらプレッシャーでした」

 夏の高校野球はトーナメント。地方大会は一度負けたら、甲子園への道が断たれる。「負けたら終わりの一発勝負にスポーツの魅力を感じる」という奥川は、高校時代に「負けたらもう明日がないって思ったら、不思議な力が出る」ということを身をもって体験した。

 3年夏の石川大会準決勝だった。鵬学園戦で1点を追う8回に起死回生の同点本塁打。「僕はホームランを打つバッターじゃない」と自認する右腕が、延長10回に2打席連続となる値千金の決勝2ランも放った。

 「極限の集中力に入った。最後は気持ち。技術で戦う勝負よりも、気持ちで戦う勝負の方が面白い。そこにスポーツの魅力が詰まっている。負けそうになった試合は何試合もあった。でも、それを乗り切るのはもう勝ちたい気持ちだけ」

 甲子園には4季連続で出場した。地方大会突破のプレッシャーから解放された聖地では「楽しくなった」と、ハツラツプレー。2019夏の大会ではエースとしてチームの準優勝に貢献した。

 今季は度重なる負傷から2年ぶりに1軍復帰。6月14日のオリックス戦(京セラ)から2連勝したが、10日の阪神戦(甲子園)で復帰後初黒星を喫した。3試合で計7四死球。チームのセ・リーグ優勝に貢献した21年は18試合で12四死球だった抜群の制球力をまだ取り戻せていない。

 勝って恩返しの思いは今も変わらない。長期離脱中には周囲のサポートに助けられた。恩に報いる完全復活への戦いは続く。(ヤクルト担当・小林良二)