亜鉛が不足すると味がわからなくなる…お手軽亜鉛メニュー「油揚げの卵とじ」

AI要約

亜鉛不足の重要性と高齢者への影響について紹介。

動物性食品を毎食取り入れることで亜鉛不足を予防。

手に入りやすい食材を使った高齢者向けのレシピ提案。

 1人分だけの介護食を作るって面倒、大変そう、というイメージはありませんか? かむ、のみ込む力が低下した方にも喜ばれ、ちょっとした工夫で家族みんなが食べられるおいしい食事を、在宅訪問管理栄養士で介護食アドバイザーの伊藤清世さんが提案します。

 最近、味を感じにくくなったと訴える高齢の利用者さんがいらっしゃいました。血液検査の結果、亜鉛の不足を、お医者さんから指摘されたとのこと。「何を食べればいいか? 海のカキにはたくさん亜鉛が含まれているらしいけど、そんなにたくさん食べられるものじゃない」

 皆さんは亜鉛の重要性をご存じでしょうか。「亜鉛欠乏症の診療指針2018」では、亜鉛不足による症状として、「皮膚炎・脱毛」「貧血」「味覚障害(舌炎)」「食欲低下」「骨粗しょう症」「キズの治りが遅い」「感染しやすい(易感染性)」などが挙げられています。

 亜鉛はどの年代でも不足する可能性があるといわれていますが、高齢の方では、年齢とともに食事摂取量そのものが低下することや、消化吸収能力が落ちてしまうこと、慢性疾患を持つ方が多く、他の薬の影響で排泄(はいせつ)が多くなったり、吸収が悪くなったりする可能性があります。

 さらに、今回の利用者さんのように味覚が低下することで、今までおいしく感じられていた食事もおいしく感じられず、食欲が低下してしまうことも多くみられます。亜鉛不足の方は栄養状態そのものが低下していくリスクがあると私は感じます。

 推奨される亜鉛の摂取量は1日あたり男性11mg、女性8mg。では、亜鉛不足を予防するにはどんなものを食べればよいのでしょうか。調べると、海のカキ(養殖/生)には100gあたり14mg、ウナギのかば焼きには同2.7mg、豚の肝臓には同6.9mgも含まれていることがわかります。しかし、これらは日常的に食べるものではありません。

 また、煮干し7.2mg、カボチャの種7.7mg、ゴマ5.5mgなども、一見すると多く含まれるように見えますが、これは100g当たりの量であり、現実的には煮干しやゴマを1日100gも食べられるわけではありません。

 基本的には動物性食品には亜鉛が含まれますので、私が利用者さんにおすすめする方法は、動物性食品を毎食とるようにすること、一つの料理にちょこっとずつ栄養を足していくということです。

 不足しがちな栄養素は、1回の食事でたくさん摂取するよりも、毎日少しずつでも継続して食事にとりいれていく方法がいいのです。

 今回紹介するレシピは、卵、油揚げ、シラス干し、乾燥サクラエビなど手に入りやすい食材を使い、高齢の方でも食べやすい調理法です。パックで売られている蒸し大豆やすりゴマなどを加えてもいいでしょう。

 油揚げは、使いやすいサイズにきざんだ「きざみ揚げ」がスーパーで売っています。自分で1cm幅の短冊に切ってもいいです。熱湯を回しかけることで調味料がしみこみやすくなる効果がありますが、そのまま使用しても構いません。

 シラスやサクラエビのうまみと甘辛い味付けが、油揚げにしみこみ、おいしく召し上がれます。ご飯にのせて卵とじ丼にしてもよいですね。