米ボーイング新型宇宙船の安全性に懸念、飛行士は別機種で地球帰還も

AI要約

米ボーイング社の宇宙船「スターライナー」が初の有人試験飛行で安全性への懸念が拭えず、地上への帰還方法を再検討する事態となっている。

スターライナーによる2人のISS滞在が予定を大幅に超過し、NASAは別の民間船での帰還を検討している。

ボーイング社とNASAの調整の中、クルードラゴンが帰還手段として浮上し、長期滞在後の安全性について検証が続けられている。

米ボーイング新型宇宙船の安全性に懸念、飛行士は別機種で地球帰還も

 米ボーイング社の宇宙船「スターライナー」が6月、初の有人試験飛行で2人の飛行士を乗せて国際宇宙ステーション(ISS)に到着したものの、安全性への懸念が拭えず、地上への帰還方法を再検討する事態となっている。2人のISS滞在は1週間の計画だったが、既に2カ月が経過。米航空宇宙局(NASA)は、来年2月以降に別の民間船で帰還させる検討を本格化した。

 スターライナーは日本時間6月5日に打ち上げられ、7日にISSにドッキングした。ただ飛行中に、エンジン機構のヘリウム漏れやエンジン5基の故障が判明。このうち4基を復旧させ、予定を1時間以上遅れて到着した。その後、機体の実物に加え、地上施設でもエンジンの燃焼試験を行うなどして検証を進めたものの、NASAによると、未だに不具合の根本原因を解明できていない。

 このため同機による2人の帰還を断念し、長期滞在を経て来年2月、既に本格運用中の米スペースX社「クルードラゴン」9号機で帰還する案が浮上した。この場合、スターライナーは無人で帰還させる。クルードラゴン9号機は米露の飛行士4人を乗せ今月18日に打ち上げる計画だったが、この問題を受け、来月24日以降へと延期された。同機がスターライナーで帰還予定だった2人を乗せる場合は、ISSに向かう際の飛行士を2人に削減し席を確保する。

 2人がスターライナーで帰還する可能性も依然、あるという。ボーイング社はエンジン28基のうち27基が健全であることを試験で確認済みで、ヘリウムのレベルも安定しているなどとし「飛行士を乗せ安全に帰還する能力に引き続き自信を持っている」とのコメントを発表。これに対し、NASAの担当者は7日の電話会見で「NASAのコミュニティーとしては根本原因や物理をもう少し理解し、関連してどんな不確実性があるのか理解したいと考えている」と慎重姿勢をみせた。

 スターライナーに搭乗したのは米国のバリー・ウィルモアさん(61)とサニータ・ウィリアムズさん(58)。ウィリアムズさんは2012年、ISSで星出彰彦さん(55)とペアを組み、3度にわたり船外活動をこなした人物だ。

 スターライナーはアポロ宇宙船のように円錐(えんすい)状の司令船と、円筒形の機械船がつながった構造。定員は7人だが、ISS本格運用では4~5人で飛行する。司令船は再使用型で、10回の飛行に耐える。クルードラゴンがアポロ司令船と同様に海上に帰還するのと違い、パラシュートとエアバッグを開いて陸上に帰還する。