異常気象が新型コレラ株の拡散を誘発する可能性、研究結果

AI要約

19世紀から20世紀にかけてアジアを中心にコレラのパンデミックが繰り返し発生した歴史を振り返る。

論文によると、エルニーニョ現象がコレラ菌の新株の急速な拡散に影響した可能性があることが明らかになる。

研究チームは特定の気象条件とコレラの発生の相関を明らかにし、環境と病原菌の関係性にも言及している。

異常気象が新型コレラ株の拡散を誘発する可能性、研究結果

コレラのパンデミック(大流行)は、19世紀から20世紀にアジアを中心に何度か繰り返して発生したが、特に1899年のインドで始まったパンデミックは急速に世界各地に広がった。ピーク時の1923年には、インドだけで80万人以上の死者が出るほどの大流行だった。

このほど発表された論文によると、エルニーニョ現象が、コレラ菌の新株の急速な拡散に、大きな役割を果たした可能性があるという。

エルニーニョ現象とは、太平洋東部において、海面の水温が平年より上昇することによって発生する、地球規模の気候現象だ。この海域での水温上昇が、周囲の海水温、さらには全世界の海流の速度へと、連鎖的に影響を及ぼしていく。

学術誌『PLOS Neglected Tropical Diseases』に2024年8月1日付で公開された掲載された論文の著者たちは、「同時多発的、かつ極端に感染者数が多いコレラの流行が発生した原因として考えられる理由の1つとして、広範な地理的領域に影響をおよぼす異常気象が挙げられる。もう1つの理由としては、コレラ菌の新株の発生がある」と説明している。「我々の研究で、1904年から1907年にかけて発生した特異的なコレラ流行の大きな要因として、気候が一定の役割を果たしていることを裏づける、複数の結果が見つかった。さらにこの要因が、コレラ菌新株の定着を促進したと考えられる」

この論文の主著者で、スペインにあるバルセロナ国際保健研究所(ISGlobal)所属のザビエル・ロドをはじめとする研究チームは、次のように述べている。「(研究対象とした)特定の期間、ならびにそれに続く数年にわたる、(コレラ菌の)拡散を促進するような気象条件の存在が、コレラの発生を促進する役割を果たしている可能性がある。さらには、コレラだけでなく、水ならびに生物によって媒介され、ゆえに環境と密接に関連するその他の病原菌の発生に関わっていることも考えられる」

研究チームはまず、複数の情報源をもとに、1893年から1939年にかけての気候データを入手した。次に、これらの気象条件の記録に、複数の統計および計算ツールを適用し、これと並行して、冒頭で触れたパンデミックの期間中にインドで発生したコレラによる死者数を地域別に分析した。