「カエルサウナ」がカエルを救う、超画期的、日向に置くだけで致死的なツボカビ症から回復

AI要約

オーストラリアのキンスジアメガエルを救うために生み出された「カエルサウナ」という独創的な方法が紹介されている。

カエルツボカビという脅威の病原菌からカエルを守るために有効な手段として、サウナが利用されている。

この取り組みは世界中の両生類に影響を与える深刻な問題に対して、新たな展望をもたらす可能性がある。

「カエルサウナ」がカエルを救う、超画期的、日向に置くだけで致死的なツボカビ症から回復

 仕組みはとても簡単だ。10個の穴を開けたレンガのブロックを直射日光が当たる場所に置くだけ。すると、暖かい場所を好むオーストラリアのキンスジアメガエル(Litoria aurea)は、蒸し風呂のようになった穴の中に飛びこみ、三角形の頭だけを出してくつろぎはじめる。カエルたちは知らないだろうが、この「カエルサウナ」が彼らの命を救えるという論文が学術誌「ネイチャー」に6月26日付けで発表された。

 カエルツボカビ(Batrachochytrium dendrobatidis、Bdとも)という脅威の病原菌は、世界中で90種を超える両生類を絶滅させ、500種を減らしている。この真菌は涼しい場所を好むため、人造のサウナで体温が上がると、効果的な対策になるというわけだ。

 カエルサウナの発案者は、オーストラリアのマッコーリー大学に所属する保全生物学者、アンソニー・ワドル氏のグループだ。カエルツボカビによって大幅に数を減らしている近危急種(Near Threatened)のキンスジアメガエルで実験を行ったところ、この試みが成功した。

 感染したカエルであっても、太陽光で暖まった黒いブロックの中で過ごすと回復した。また、この場所を使ったカエルは、感染しても重篤化しなかった。

 サウナは簡単に設置でき、経済的でもある。屋外に置いておくだけでいい。それでも、カエルサウナは両生類をツボカビから守る独創的な対策の一つでしかないとワドル氏は話す。

 ツボカビはかなり蔓延しているので、これを根絶するのは「風邪を根絶するのと同じようなもの」、つまりほとんど不可能だ。

 カエルツボカビがはじめて記録に現れたのは、1970年代から1980年代にかけてのことだ。ワドル氏によると、カエルツボカビは両生類の疾病の中で一番深刻で、世界中で多くの種に影響を与えている。さらに、たとえばヨーロッパでは北に向かって拡大しているなど、気候変動によってこれまで以上に広がりを見せている。

「これは生命の樹全体に影響を与えます。たとえるなら、すべての哺乳類に感染するコロナウイルスのようなものです」

 カエルツボカビは数百種あるツボカビの一つで、水中またはほかの両生類との接触によって広まる。感染すると、皮膚のタンパク質が食べられ、やがて死に至る。

 カエルツボカビは、すべての両生類を殺すわけではない。ウシガエルなどは、害を受けることなく病原菌を運び、拡散させる。この不思議な特徴のため、両生類の生物多様性が著しく低下し、生態系の健全性が損なわれている。

「世界からカエルがいなくなることは、決してないでしょう」。そう話すのは、ナショナル ジオグラフィックのエクスプローラー(探求者)で、ホンジュラス両生類救済保全センターの保全責任者であるジョナサン・E・コルビー氏だ。

 ではどうなるのかと言えば、「カエルはたくさんいても、かなり多様性が失われた世界です」