月の地下に洞窟を発見。将来の活動拠点として期待できそう

AI要約

イタリアの研究チームが、月面のレーダー画像を分析し、地下に洞窟を発見した。

洞窟は月の最も深いピットである静かの海の縦孔に位置しており、将来の人類の月での活動拠点となる可能性がある。

洞窟内の環境は有害な宇宙線から保護され、熱安定性や微小隕石からの保護など、月面での利点が多い。

月の地下に洞窟を発見。将来の活動拠点として期待できそう

イタリアの研究チームが月面のレーダー画像を分析し、月の地下に洞窟を発見しました。この洞窟は、今後人類の月での恒久的な活動拠点の候補地になる可能性があります。

この洞窟は、月で最も深いピット(縦孔)として知られる静かの海(Mare Tranquillitatis)の縦孔にあります(静かの海は1969年にアポロ11号が着陸した場所)。縦孔は溶岩チューブの天井部分が崩れることで形成されています。

研究者たちは縦孔から広がる洞窟を探すにあたって、月周回衛星「ルナー・リコネサンス・オービター(LRO)」の観測機器Mini-RFが2010年に斜め観測で取得したレーダー画像を分析。縦孔付近のレーダー画像に基づく3次元シミュレーションを実施し、縦孔の西側でレーダーの輝度が増加しているのは、地下の地形によるものだと結論付けました。

チームはこの洞窟が長さ30~80m、幅およそ45mで、平坦もしくは最大で45度傾いていると推定しています。

彼らの研究成果はNature Astronomyに掲載されました。

「未来のロボットミッションによる月の洞窟の探索は、月の地表下についての新鮮な視点を提供し、月の火山活動の進化に関する新しい知見をもたらす可能性があります」

と、チームは論文に書いています。

「その上直接探査でなら、将来の有人利用に最適な温度条件を有し、放射線から守られ安定した地表下の環境があると確認できるかもしれません」

とのこと。

以前ギズモードで報じたように、月の縦孔内で太陽の光の届かない領域は、比較的穏やかな温度に保たれています。2022年にはLROからのデータから、そういった縦孔内部の日陰部分は、温度が17.2℃前後だと示されました。

研究の共著者で共にイタリアのトレント大学の研究者であるLeonardo Carrer氏とLorenzo Bruzzone氏は、洞窟内への月面基地の建設は月の表面に建てる場合と比べ、以下のような“大きな利点”があると米ギズモードに教えてくれました。

絶えず月面に降り注ぐ、人類には有害な宇宙線と太陽放射からの保護。

月表面の気温は劇的に変化するのに対し、洞窟内部は定常な温度を保持することによる熱安定性。

洞窟の岩石が衝突に対する天然の盾になるという、微小隕石からの保護。

洞窟は水氷や他の鉱物の源に近いかもしれないため、資源を入手できる可能性。

月上の半永久的な拠点は、月面での研究ミッションのためだけでなく、太陽系内のさらに遠方へのミッションの発着場としても役立つでしょう。

洞窟が月面基地の候補地になる可能性以外にも、Carrer氏とBruzzone氏はこのような洞窟には、月の歴史が保存されているかもしれないと述べていました。

洞窟内の岩石は月面の過酷な環境による変化がないため、月の火山活動と内部組成についての疑問への「重要な知見を提供する可能性がある」ようです。

Source: Nature Astronomy