きれい好きなのに「風呂キャンセル」 ハードルを下げる三つの提案

AI要約

風呂キャンセルの状況や原因、対策について考察した内容。

夫の自堕落なルーチンと対策を紹介し、清潔好きを活かす方法を提案。

睡眠の重要性や過剰な寝過ぎについても言及し、ストレス対処法を紹介。

きれい好きなのに「風呂キャンセル」 ハードルを下げる三つの提案

 本当は夜寝る前に入浴したいと思いながらも、結局入ることができないまま寝てしまう「風呂キャンセル」。前々回、前回と、その対策をお伝えしてきました。

 多くの皆様から、「帰宅後すぐにお風呂に入ったおかげで早寝が実現した」などの実践報告が寄せられてうれしい気持ちでいっぱいです。一方で、「どうしてもどうしても、布団に入る直前に風呂に入らないと、布団が汚れそうで嫌だ」というお声もたくさんいただきました。

 確かに、風呂に入って6時間後に就寝なんてことになれば、夏場なら汗もかきそうですし、調理や皿洗いなどで汚れそうな気もします(私はあまり気にならない派ですが)。今回は、そんなお悩みについて考えます。

■だらだらしていると、眠くなり…

 ADHDの主婦リョウさん(仮名、40代女性)の夫は実は、「寝具は聖域だ!」という清潔派でありながら、「とにかく一度腰を下ろすと根が生えたように動けなくなる」人でもあり、風呂キャンセル常連者です。

 こうしたお悩みを解決するには、リョウさんの夫の現状の時間割を聞いてみることからです。

 リョウさんの夫は、帰宅後すぐにスーツを脱ぎ捨てて、Tシャツとハーフパンツに着替えて、夕ご飯を食べます。夕食後もつまみを出してきて、甘いもの、辛いものを交互に食べながらネット動画を見て、1時間はだらだらします。やがて眠くなって、他の家族に風呂をせかされても、適当にやりすごしています。

 「食器ぐらい洗っておいてよ!」と捨てぜりふを残して娘と共に寝室へ向かうリョウさんに「はーい」と生返事をして、まただらだらします。

 ふと気づくと午後11時。

 今から風呂に入ればギリギリ0時までには寝られそうですが、

 夫「食器洗いもあるしなあ。風呂上がりに食器洗いってテンション落ちるし。面倒だなあ。もうちょっとやる気になるまで、動画でも見ておこうか。こういうのはタイミングが大事」

 そんな言い訳を並べて、誰もいなくなったリビングでスマホを触ります。もうとっくに食べすぎて胃がムカムカしています。そんな不快感でまた現実逃避したくなるのです。そんな時、明日の憂鬱(ゆううつ)な会議のことまで思い出すと最悪です。もう寝るしかありません。全てのことを放棄して、考えられないように寝てしまうのが一番なのです。

 話はちょっと脱線しますが、こういう「寝逃げ」は非常に多く見られます。

 「1日に16時間も寝るんです」といったお悩みの背景には、起きていると見たくない現実があって、それに太刀打ちできない時に、もう何もかも忘れたい、逃げ場もない、寝ている時だけが唯一の安息できる時間……となるのです。弱い立場にいる人こそ、寝過ぎている印象があります。

 もちろん、睡眠は脳を休めたり、記憶を整理したりして、翌日の情緒を安定させ、思考をクリアにしてくれます。睡眠は回復に必要なのですが、適正量に個人差はあれど、せいぜい1日6~8時間くらいでしょう。

 それ以上に寝過ぎている場合には、「あれ? 今の自分にとって相当に手に負えないストレスがあるのだろうか」「何かから逃げているのだろうか」と自問自答してみましょう。

 一時的に逃げることで、ストレスの原因になっているものへの恐怖心はより強まることもわかっています。避け続けてきて、もう恐怖が高まりすぎて、どうしようもなくなっている時には、人の力を借りましょう。専門家でなくても大丈夫です。

 「実は、ずっと通帳記帳をしてなくて、残高が心配。変なことお願いするけど、勇気が出ないから一緒に銀行についてきてくれない?」

 「実は引っ越しが迫っているのに、どうしても荷造りができなくて。今日無事に段ボールをもらってくることができたら、LINEで報告していい?」

 こんなふうに包み隠さず現状を打ち明け、ちょっとだけ助けを借りるのです。知り合いに打ち明けるのが小っ恥ずかしい場合には、こころの専門家の方が割り切れるかもしれませんね。

■「もともとはきれい好き」をエンジンにする

 さて、話を元に戻しましょう。

 リョウさんの夫の帰宅後のルーチンは、なかなかに自堕落ですね。いわゆる「意識低い系」であるだけでなく、夫としても父親としても落第レベルと言わざるを得ません(厳しいでしょうか)。家事も育児もせずに休憩だけに時間を使っているのは、他の家族とのバランスが非常に悪いですね。家族の蚊帳の外でした。

 そんな中、リョウさんが皿洗いを言いつけたのはナイスでしたが、腰を上げるのが最も重いタイミングで、さらにタスクが残されて、ますますやる気が失せたリョウさんの夫です。

 家事分担や育児などつっこみどころは満載ですが、ひとまずリョウさんの夫が「いかにそのままソファで寝逃げせずに、風呂に入って0時までに眠れるか」に焦点を当てていきます。

 リョウさんの夫の「もともとは潔癖」という性質をエンジンとして活用します。

 前回ご紹介したように、その人の価値観は何よりのエンジンになります。いわゆるこだわりというやつです。

 リョウさんの夫の時間割ではソファでそのままうたた寝なので、歯磨きすらできているか怪しい状況ですね。きっと歯磨きをしたがっていると思うのです。でも、洗面所まで行けない。ここを狙います。

 ●やることその1:ダイニングテーブルに歯ブラシと歯磨き粉を置いておく

 一度飲み始めると根が生えたようにそこから動かなくなる夫。ならばそのダイニングテーブル付近に歯ブラシがあったら、そこで歯磨きが開始できます。口の中があわぶくだらけになったら、きっとうがいがしたくなりますね。きっと清潔好きなリョウさんの夫は、洗面所にうがいになら行くかもしれません。

 ●やることその2:ダイニングテーブルに汗をふきとるシートをおいておく

 いまにも横になりたい時に、脱衣所まで移動して風呂に入ることは非常に高いハードルに見えるでしょう。そんな時に、「このシートで顔を拭いたら少しマシかも」と思えれば、ハードルはかなり下がります。少しは清潔にできたからそのまま寝てしまおうとなっても、脂ぎった顔で寝るよりマシですが、きっとリョウさんの夫は「ああ、まだこれじゃ足りない。どうせならもっときれいに洗いたい」となりそうなのです。日頃掃除をあまりしない人が、ひとたび片付けると、「もうちょっときれいにしたい」と自らもっと片付けてしまうのと同じ原理です。

 ●やることその3:寝逃げしたいほどのやる気なしモードのときには皿洗いは諦める

 こんなことを書くとリョウさんに怒られそうですが、皿洗いは、無事に風呂に入り、睡眠を確保できた後の課題にまわします(具体的には翌朝早起きしてやってもらいます)。 というのも、ただでさえ腰の重い人に、さらにタスクでハードルを上げてしまうことになっているからです。変化は一度に一つまで。「一つずつ」がポイントです。

 こうして睡眠を確保できるようになったら、もっともっと家事に育児に参加していってもらいたいものですね。