謎の電波を発していた天体「パルサー」。宇宙精密時計ともいわれるその星の正体「中性子星」とはどんな星なのか?

AI要約

パルサーは中性子星であり、その成り立ちや観測方法について解説する。中性子星は恒星の終状態として生まれ、超新星爆発の際に形成される。1987年に中性子星が超新星爆発の中心部で発見された。

恒星は核融合によって生まれ、燃料を使い果たすとその運命が決まる。質量によって超新星爆発かブラックホールへの進化が決まる。ブラックホール形成時には外側に物質が吹き飛ばされない。

重力波観測を通じてナノヘルツ重力波という謎の波によって宇宙の誕生が探求され、宇宙誕生論が進展している。

謎の電波を発していた天体「パルサー」。宇宙精密時計ともいわれるその星の正体「中性子星」とはどんな星なのか?

 時空の歪みとして捉えられた謎の重力波の存在。世界に衝撃を与えたこの観測事実から宇宙誕生に迫る最新の宇宙論を紹介する話題の書籍『宇宙はいかに始まったのか ナノヘルツ重力波と宇宙誕生の物理学』。この記事では観測された謎の重力波「ナノヘルツ重力波」の正体に迫るため、その観測手法のもととなった電波天文学について紹介します。以前の記事「偶然が生み出した天文学「電波天文学」 宇宙から届く謎の電波の正体は!」で紹介したように、ベル博士が偶然見つけた電波を発する天体「パルサー」がどうやって誕生するのか、ここで見ていきましょう。

 *本記事は、『宇宙はいかに始まったのか』(ブルーバックス)を再構成・再編集したものです。

 先に、パルサーの正体を紹介します。

 パルサーは「中性子星」とよばれる星です。いきなり、中性子星といわれて驚いた方もいらっしゃると思います。この中性子星は、いま天文学でもっとも注目されている天体の一つです。そこで、中性子星の成り立ちについて、簡単に解説します。

 中性子星は、宇宙で最初に誕生するものではありません。ある恒星の終状態として生まれます。その過程を順番に見ていきましょう。

 まず、恒星は宇宙空間におけるガス(気体状態の物質)が重力で集まることで生まれます。恒星の内部は、中心に向かうほど物質密度が高くなり、その結果、核融合を起こします。

 この核融合による熱エネルギーと引力である重力のエネルギーが釣り合った天体が恒星です。私たちにとっては、太陽がもっとも身近な恒星です。

 では、恒星が核融合の燃料を使い果たすとどうなるでしょうか。

 核融合の燃料を使い果たした星は、引力である重力を支えることができないため、内部へ収縮を始めます。

 このとき、恒星の質量がその運命を分けます。太陽の10倍から30倍までの質量をもつ恒星の場合、急激な収縮である重力崩壊を起こし、内部が圧縮された際に大量の熱エネルギーが放出されて、恒星自体が吹き飛ぶとされています。この現象を超新星爆発とよびます。

 このとき、恒星の物質のすべてが外側に吹き飛ぶのではなく、中心部分に固いコアが形成されると考えられています。このコアとして残される部分が、中性子星です。

 1987年に発見された超新星爆発の中心部分に中性子星が存在する証拠が、2024年に見つかりました。

 一方、太陽質量の30倍以上の恒星は、中心部分で爆発が起こる前にブラックホールとなってしまいます。

 ですから、このブラックホール形成の場合では、外側に物質が吹き飛ばされることはありません。