36歳の女性 気温30度を超えると便が出なくなるのはナゼ?…「夏便秘」への対応策はあるのか

AI要約

夏は便秘の季節であり、暑さや食欲減退、エアコンの影響で便秘が起こりやすくなることが紹介されています。

記事では、便秘外来に訪れた女性の事例から、朝食を摂らずに仕事を始める生活習慣が便秘を引き起こす要因であることが説明されています。

さらに、水分の摂取や腸の蠕動運動の重要性、エアコンの影響など、夏場における便秘に関する詳細な情報が提供されています。

 消化器内科医の松生恒夫さんが、豊富な診療経験を基に、胃や腸の整え方を紹介します。

 便秘になりやすい季節があるのはご存じですか? 私のクリニックの便秘外来では、最高気温30度以上の真夏日や35度以上の猛暑日が続くと、「排便困難」や「硬便」を訴える患者さんが増えます。夏は便秘の季節。便に回る水分が減って便が硬くなり、出にくくなります。加えて食欲減退による便量の減少やエアコンの冷えも。暑い時期に快適な日々を維持するために知っておきたいことを紹介します。

 会社勤めをする36歳の女性は、いつも猛暑になると便秘気味になるので、便を軟らかくする作用がある市販の酸化マグネシウム製剤を服用していました。ところが昨年の夏は暑い日が続き、1週間も排便が止まり、腹部の膨満感はひどく、クリニックを受診されました。

 話を聞くと、夏場は食欲が落ちる上に、朝はバタバタしているので、朝食はほとんど取らず、お茶も飲まずに出勤。出社すればすぐに仕事を始め、午前中は暑い中、外回りが多いそうです。昼食を食べて帰社し午後はエアコンで25度くらいの職場にいて、寒いので薄い上着をはおっています。退社するころには、体が冷え、腹部膨満感を感じていました。この女性の生活の何がひどい便秘を招いたのでしょうか。

 大腸の働きは温度に大きく左右されます。夏場は汗をかくので、排尿回数が減ることに気づくと思いますが、同様の水分減少は大腸内でも起こっています。熱中症対策もあるので水分をこまめに摂取していても、生理学が専門の河原克雅・北里大学名誉教授の報告によると、水分の多くは小腸、その後、大腸で吸収されて汗や尿として排出されるため、大便に残るのはわずか2%。多少、水分補給が増えても、汗で出てしまうので夏場の便は硬くなりがちです。

 食事を取ると直腸反射で便意が来るのですが、受診された女性のように朝食を取らないと、直腸反射による腸の蠕動(ぜんどう)運動が起きません。食物繊維の摂取量が減少すると便の量が減り、水分摂取が少ないと便は一層硬くなります。さらに悪いことにエアコンが利いた職場で、腹部を冷やしてしまうと、自律神経のうち交感神経が優位になり、大腸への血流が低下して消化管の動きが抑えられてしまいます。夏場は快便に都合の悪いことがいくつも起こるのです。