テレビやメーカーを鵜呑みにすると危険!...「健康診断前」のビタミンCにまつわる「恐ろしい誤解」を健康情報学の専門家が徹底解説

AI要約

職場健診の前日の食事やビタミンC摂取について注意が必要

ビタミンCの摂取が健康検査結果に影響を及ぼす可能性がある

正確な健康状態の把握を優先し、健診に備えるべき

テレビやメーカーを鵜呑みにすると危険!...「健康診断前」のビタミンCにまつわる「恐ろしい誤解」を健康情報学の専門家が徹底解説

 毎年1回は受けることが義務付けられている職場健診。健診結果の異常を示す「*」がついた数値には、実は気にしなくて良いものもあれば、今すぐに再検査を受けなければならないものもある。果たしてあなたは診断結果の本当の意味を理解しているだろうか。

 BMI・血圧・尿糖・眼底など項目別にその検査結果の正しい見方を解説した『健診結果の読み方』(永田宏著)より一部抜粋してお届けする。

 『健診結果の読み方』連載第35回

 『放っておくと「人工透析」の恐れも…「腎臓病」の早期発見には健診結果のこの項目に注意! 』より続く

 健診の前日は夜9時までに夕食を済ませ、当日は水やお茶以外は口にしないのが基本です。しかしペットボトルのお茶は飲まないほうがいいかもしれません。というのも、ビタミンC(アスコルビン酸)が添加されているものが多いからです。

 テレビの健康番組などでは、ビタミンCをサプリメントなどで多めに摂ることを推奨しています。ビタミンCが1000mg入っているサプリや飲料が普通に売られています。それどころか1日に3000mg、5000mg摂りなさいというメーカーもあるくらいです。

 ところが厚生労働省の推奨量は1日100mgに過ぎません。ひとの体はビタミンCを蓄積できないため、摂り過ぎた分は、すぐにオシッコとして出ていくだけです。

 そのビタミンCが、検尿の結果を狂わせることがあるのです。とくに尿糖と尿潜血が影響を受けやすくなっています。ビタミンCの強い抗酸化作用が、尿中の糖分や赤血球成分を分解してしまうからです。そのため本来は尿糖や尿潜血が陽性のひとが、陰性と判定されることがありますし、陽性でも2+が1+に、3+が2+に、というように、1段階軽い判定が出ることもあります。

 検査紙は、ビタミンCの影響を受けにくいように作られています。尿中のビタミンC濃度が50mg/dL以下なら、ほとんど影響を受けません。しかしそれを超えると、徐々に影響が大きくなっていきます。

 一方、尿中のビタミンC濃度は、摂取後2~3時間で最大になり、その後はゆっくりと減っていきます。しかしビタミンCが1000mgのサプリメントを摂取すると、10時間以上にわたって、尿中濃度が50mg/dLを超え続けることが確認されています。つまり前日の夕食後に大量のビタミンCを接種すると、翌朝の採尿時点では、尿中濃度が50mg/dLを超えている可能性が高いということです。

 また最近は、持続型といって、腸内でゆっくり溶けるビタミンC錠が売られています。これだと採尿の10時間以上前に飲んだとしても、まだ尿中にかなりの量が入っているはずです。

 いずれにせよビタミンCが大好きなひとは、尿糖や尿蛋白が本当よりも低く判定されている可能性が高いのです。せめて健診の前日や当日は、ビタミンCを控えるように注意しなければいけません。

 しかしなかには、検尿の結果を良く見せるために、わざとビタミンCを大量に摂取しようと考えるひとがいるかもしれません。でもそんな裏技を使うのは、やめたほうがいいでしょう。病気の発見が遅れて、重症化してしまうかもしれないからです。

 せっかくの健診です。できるだけ正確に自分の健康状態を確認できたほうが、長い目で見れば、得であることは間違いありません。