思春期の不適切なネット使用、16歳の幻覚・抑うつリスク1.6倍に

AI要約

思春期の10~12歳での不適切なインターネット利用が、幻覚や妄想、抑うつのリスクを1.6倍高めることが研究で明らかになった。

研究チームは都内の3千人を対象に調査を行い、不適切な使用と精神状態の関連性を探った。

結果から、適切なインターネット利用とメンタルヘルスの維持には、背景にあるストレスへのサポートが重要だと指摘された。

思春期の不適切なネット使用、16歳の幻覚・抑うつリスク1.6倍に

 思春期の10~12歳の時に、不適切なインターネットの使い方をしていると、16歳で幻覚や妄想、抑うつといった症状に悩むリスクが1・6倍高まることがわかった。東京都医学総合研究所や国立精神・神経医療研究センターなどが、都内に住む3千人余りを追跡調査し、論文を海外の医学誌に発表した。

 インターネットは現代の生活に不可欠だが、不適切な使い方を続けるとメンタルヘルスの不調が高まることが指摘されていた。ただ、因果関係を明確に示した研究はこれまでほとんどなかったという。

 研究チームは、都内の3区市に住む2002年9月~04年8月生まれの子どもたちを無作為に抽出。協力が得られた3171人とその保護者を対象に、10歳、12歳、16歳時点のインターネットの使用状況や精神状態について調べた。

 使用状況については、インターネットに時間を使いすぎる▽インターネットを使えないとイライラする▽友人や家族との関係に支障がある▽他の人と一緒に過ごすよりインターネットを好む▽睡眠不足になっている▽使い始めるとやめられない――などの項目の回答から、不適切のレベルを判定。

 精神症状については、子ども本人に「他の人には聞こえない声を聞いたことがある」「テレビやラジオからあなただけにメッセージや暗号が送られてきたことがある」「何をしても楽しくない」「自分のことが嫌」「さみしい」などの項目に該当するかを答えてもらって判定した。

 その結果、12歳時点で不適切な使い方のレベルが高い子どもは、低い子どもと比べて、16歳時点で妄想や幻覚を経験する割合が1.65倍高かった。抑うつの症状は1.61倍だった。

 また、不適切な使用に加えて、子どもが「引きこもって他人と関わろうとしない」「内気、臆病」「楽しくない、悲しい、落ち込んでいる」といった社会的なひきこもりの状況にあることが、その後のメンタルヘルスの不調に大きな影響を与えていることも分かった。

■「背景にある子どものストレスに目を向けて」

 分析を担当した国立精神・神経医療研究センターの成田瑞(ずい)室長は「インターネットはメンタルヘルスに悪影響が出るというリスクを、保護者はあらためて認識する必要がある」と話す。

 長時間使っていても、楽しく使っていれば不適切な使用のレベルは低いが、イライラした状態で使っていたり、やめられなくなっていたりする場合、不適切なレベルが高まる。こうした場合は、友人関係など、私生活で孤独や不安を抱えている可能性もあるという。

 「単に使用を禁止するのではなく、不適切な使い方に至っている背景にどんなストレスがあるのかに目を向けて、サポートをすることが大切ではないか」と話していた。

 論文はこちら(https://doi.org/10.1093/schbul/sbae089)へ。(鈴木彩子)