安倍晋三氏の秘書だった市長、ライバルだった林芳正氏にくら替え 後ろ盾なくした山口の政治家、総裁選で生き残りの道模索

AI要約

山口3区の林芳正長官と9人の候補者が自民党総裁選に立候補し、林氏と関係のある安倍氏の支持者の動きが分かれている。

林氏を支援する議員や首長もいれば、他の候補を応援する議員もおり、地元の動向が分かれている。

安倍氏の影響が薄れた中、支持者たちは動きを見せる中で、林氏を支援する組織が地道に活動を展開している。

安倍晋三氏の秘書だった市長、ライバルだった林芳正氏にくら替え 後ろ盾なくした山口の政治家、総裁選で生き残りの道模索

 林芳正官房長官(山口3区)たち9人が立候補した自民党総裁選(27日投開票)を巡り、林氏とライバル関係だった故安倍晋三元首相に近かった党山口県連所属の議員たちの対応が分かれている。立ち位置を変えて林氏支援に回る議員や首長がいる一方、他の候補の応援に力を入れる議員もいる。

 「この場で言うことが適切か分からないが、安倍の秘書を務めた人間として林先生をしっかり支えることができるか随分考えてきた」。11日に下関市であった、林氏の総裁選勝利に向けた決起大会。安倍氏が地盤とした同市の前田晋太郎市長は、安倍氏の秘書だった自身の経歴に触れ、あいさつした。「林先生に会うたびに温かい言葉をかけられ、深い知識と経験に心を動かされた。今は心の底から林先生を応援させていただきたい」

 大会は後援会主催で、林氏の秘書だった宇部市の篠崎圭二市長たち県内の首長や県議、党員など約800人が集った。オンラインで参加した林氏は「こうした会合が何より心の支え。ぜひ山口の地から日本中に広げていただきたい」と協力を求めた。

 前日には県議会の最大会派自民党(26人)と自民党新生会(1人)の全県議が、林氏を支援する会を立ち上げた。会長に就いた守田宗治氏(下松市)は、安倍氏に近かった県議から林氏支援への異論はなかったか報道陣に問われ、「全く問題ない」と強調。県議たちは地元の各支部の党員に協力を求め、広島県や九州地方を回り支援を呼びかけている。県議の一人は「これまでの林さんとの距離にかかわらず支援せよという圧を感じる」と打ち明ける。

 県議が団結をアピールする一方で、県連所属の国会議員には林氏以外の候補を推す動きが相次ぐ。安倍氏の「後継」の吉田真次氏(山口4区)は小林鷹之前経済安全保障担当相への支持を交流サイト(SNS)で表明。6日には小林氏とともに長門市の安倍家の墓を訪れた。杉田水脈(みお)氏(比例中国)は、安倍氏の路線継承を打ち出す高市早苗経済安保相の推薦人に名を連ねた。林氏以外の候補の支持に回る動きはほかにもみられる。

 吉田氏と杉田氏の行動について、守田氏は「そういった方と話をしていない」と言うにとどめる。林氏に近い県連幹部は「地元が一丸となり林先生を応援するべき時に身勝手な行動」と不快感を隠さない。安倍氏の死去から2年2カ月。党関係者は「安倍さんという後ろ盾がいない中、安倍さんに近かった候補と距離を縮め、生き残る道を探っているのだろう」とみる。