【コメ概算金】適正価格検討すべきだ(9月19日)

AI要約

JA全農福島は、2024年産米の仮払金を3割増額。生産者には喜びの声も。

生産コスト上昇により概算金が引き上げられ、農家の励みに。しかし、経営安定にはさらなる米価底上げが必要。

米価の上昇は消費者への負担増も。需要・供給のバランス調整や地産地消促進が課題。

 JA全農福島は、2024(令和6)年産米を生産者から販売受託する際の仮払金の目安となる概算金を前年より3割程度増額する。3年連続の上昇となるが、生産者からは高止まりするコストを賄えても、利益を得る水準には達していないとの声が上がる。持続可能な稲作の実現に向けて、引き続き、米価の適正化を進める必要がある。

 県内主要銘柄の概算金は、前年比で1俵(60キロ)当たり4000~4300円引き上げられた。最高値の会津産コシヒカリは前年の1万2800円に4000円上乗せされ、16800円となった。コメの品薄感が続き、新米への需要が高まっている上、原油高による資材費高騰など生産現場の現状を踏まえて判断したという。増額幅は過去30年間で最大となり、農家にとっては大きな励みになるはずだ。

 農林水産省の農業物価指数によると、2024年産米の生産コストは、肥料や燃料などが2020年から約3割、農薬が1割上昇している。最近は人件費も伸び続けている。概算金が上積みされただけで農家経営が安定するわけではないだろう。営農継続には米価水準のさらなる底上げが求められ、価格に生産コストを適切に転嫁できる仕組みの構築も課題になる。

 一方、コメ政策は転換期を迎えつつあると言えそうだ。コメ離れなどを背景に米価は、長らく低迷していた。昨夏の猛暑に伴う生育不良で流通量が減り、外食産業の需要の高まりもあって、今は値上がりに転じている。国による生産調整だけでは、需要と供給のバランスを十分に保てないのではないか。米価を安定させるには、まずは中長期的な視点で稲作の将来像を描かなくてはならない。

 米価の上昇は、消費者にとっては家計の負担増につながる側面もある。値上がりを受け、買い控えが進むと再びコメ余りが生じる恐れがある。こうした悪循環を生まないためにも、消費拡大や地産地消の機運を一層高める施策を検討する余地がある。県民や国民の理解を得る取り組みも欠かせない。

 コメは食料安全保障の柱であり、国を挙げて守らなくてはならない。地域経済にも大きな影響を及ぼす。政府主導で活発な議論が交わされるよう期待したい。(角田守良)