斎藤・兵庫県知事“一発レッドカード” 百条委で弁護士「告発者探し、あり得ぬ法令違反」

AI要約

兵庫県知事のパワーハラスメント行為を告発した文書問題について、公益通報者保護法に違反した兵庫県の対応が問題となっている。

公益通報者保護法に詳しい弁護士の指摘によれば、外部通報者の特定は法令違反であり、男性の懲戒処分も適法でない可能性が高い。

公益通報制度の整備が不十分であることや、公益通報に関わる事例を踏まえると、兵庫県の対応は問題があるとされている。

斎藤・兵庫県知事“一発レッドカード” 百条委で弁護士「告発者探し、あり得ぬ法令違反」

 斎藤元彦・兵庫県知事のパワーハラスメント行為などを告発した文書をめぐる問題で、「公益通報」としての調査結果を待たずに告発者を特定し、元県民局長の男性(2024年7月死亡)を懲戒処分とした兵庫県の対応のあり方が問われている。

 この文書問題をめぐる兵庫県議会の調査特別委員会「百条委員会」は6日、公益通報制度に詳しい山口利昭弁護士(大阪弁護士会)を参考人として招いた。

 山口弁護士は、公益通報者保護法について説明し、今回の兵庫県の対応は「法令違反」と厳しく指摘した。

 消費者庁の公益通報者保護制度検討会の委員を務めている山口弁護士は、以下の3つの論点を挙げた。

 ▼2024年3月、男性が県議会議員や報道機関の一部に文書を配布したこと(外部通報)が公益通報に該当するか

▼この外部通報に対する兵庫県の対応が適法か

▼同年4月に男性が公益通報(内部通報)後、調査結果を待たずに懲戒処分したことは適法か

 男性は2024年3月31日付で定年退職する予定だった。しかし県は3月27日に定年退職を取り消した。

 その後、男性は4月4日に県職員公益通報制度の窓口に通報したが、県はその対応を待たずに5月7日、停職3か月の懲戒処分とした。

 山口弁護士は、議員や報道機関への告発は公益通報の対象となり、「男性を特定して事情聴取することなく、文書に記された7つの項目について調査はできる。外部通報であっても、通報者(告発者)を探索をしてはならない。あり得ない法令違反」と指摘した。

 2020年の法改正で、事業者に公益通報への対応体制を整備する義務などを新たに課した点に触れ、「兵庫県(兵庫県庁)では、対応体制の整備がなされておらず、外部通報と内部通報が同じ指針で運用されていて、違法状態が続いている」とした。

 そして、実際に調査にあたった企業の例を挙げ、「ハラスメントが認められた際の懲戒処分は相当厳しい。代表者は“一発レッドカード”で退任している」と述べ、兵庫県の一連の対応を非難した。

 また、山口弁護士はこうした状況を踏まえ、男性が5月に受けた懲戒処分について、「無効となる可能性が高い」とした。

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 この日、斎藤知事の最側近とされた元副知事の尋問があった。

 元副知事は、男性の公用パソコンのメール送受信記録に「クーデター」や「革命」などの文言が含まれていたため、「不正の目的があった」と主張、「(公益通報の)対象外だと思っていた」と述べた。

 この発言について山口弁護士は「事業者(兵庫県)側に立証責任があり、第三者機関に委ねるなど相当厳格な調査をしなければ“不正の目的”は認められない」と述べ、やはり男性による文書の配布は「公益通報者保護法上の外部公益通報にあたる」とした。

 また、委員から出た「(斎藤知事が一貫して主張する)『誹謗中傷性が強く、居酒屋などで聞いた単なる噂話に真実相当性はない』という考え方は、公益通報者保護法の理念を否定するのでは」という意見にも同調した。

 その理由として、「局長という、幹部クラスによる外部通報があった以上、単なる伝聞や憶測ではなく、通報内容を裏付ける内部資料や、関係者による信用性が高い供述があると思われるから」と述べ、告発文書の「真実相当性」は高いとした。

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 企業や団体の公益通報制度の不備が指摘され、行政指導を受けた例として、

▼修理費水増しによる保険金不正請求問題などが発覚した中古車販売大手・ビッグモーターや、

▼自動車の認証試験で大規模な不正を行っていたダイハツ工業などがある。

 このほか、鹿児島県警の不祥事の隠ぺい疑惑を、フリーライターに告発した元幹部が、逆に守秘義務違反で逮捕・起訴された例は、元幹部が情報漏えいではなく、公益通報だったとして無罪主張する方針だ。

 百条委は6日、県の対応が公益通報者保護法に違反していないかどうかの見解を、消費者庁に確認する方針を決めた。