【いわきに国際拠点】若い人材定着に期待(8月28日)

AI要約

国連訓練調査研究所が日本初となる地域リーダー国際研修センターをいわき市に設立する。センターは復興や人口減少などの課題解決に取り組むリーダー育成を目指す。

いわき市に設立されるセンターは、東日本大震災と原発事故を経験した地が選ばれた。講座は震災や原発事故に焦点を当てつつ、高齢化対策などのプログラムも考慮されている。

シファールの設立は若者の首都圏流出に危機感を持ついわき市の一環であり、人材定着や雇用創出にも期待が寄せられている。産業界との連携や若者支援の取り組みが重要とされている。

 人材育成を担う国連訓練調査研究所(UNITAR=ユニタール)は11月にも、日本初となる地域リーダー国際研修センター(CIFAL=シファール)の拠点をいわき市に設立する。市と、東日本国際大・いわき短大を運営する学校法人昌平黌が事務局となり、復興や人口減少などの課題解決に挑むリーダーを育てる。若者の市内定着につなげるには、実効性のある体制づくりが求められる。

 シファールは英国、シンガポールなど世界31カ所に拠点を設け、国連の持続可能な開発目標(SDGs)の実現に向けた人材育成の講座、イベントなどに取り組んでいる。いわき市には32カ所目として「CIFALジャパン国際研修センター」が開設される。東日本大震災と東京電力福島第1原発事故を経験した地が日本の拠点にふさわしいと国連側が判断した。東日本国際大の星野千華子客員教授の夫で元国連大使の星野俊也氏が仲介し、実現の運びとなった。

 ジャパン国際研修センターの初代所長に就く内田広之市長は「当面10件程度の講座を設け、市内外の若者や企業人材など年間2千人程度の受講を目指す」と思い描く。講座は震災・原発事故を踏まえた内容が軸になるとみられるが、ユニタールは世界で最も高齢化が進んでいる日本から対策を発信できるようなプログラムも想定している。オンラインを含め多くの受講者を集めるには、有益で魅力あるテーマ設定と優れた講師の確保が欠かせない。

 いわきでシファールを受け入れる背景には、若い世代の首都圏流出が深刻化していることへの危機感がある。昌平黌の緑川浩司理事長は「国連の都市いわき」をシンボル化し、国連の旗の下に人材を定着させる構想を示す。市はシファールの活動に関連して将来的に100人の雇用を生み出す目標を掲げている。実現に向け、産業界との連携、国際的な仕事に関心のある若者への情報発信、起業を後押しする取り組みなどに力を注いでほしい。

 浪江町を拠点とする福島国際研究教育機構(F―REI、エフレイ)との協力関係づくりも必要ではないか。国内外の人材が集う浜通りの創生へ、国や県の関わりにも期待したい。(渡部育夫)