地域おこし協力隊 3割が途中退任 特産品開発のはずが店番のみ◇住民から「税金の無駄遣い」 背景に地域の無理解やミスマッチ 鹿児島県内

AI要約

地方に移住して活性化に取り組む「地域おこし協力隊」の15年の取り組みについて報告。退任率、活動ミスマッチ、結果不満な隊員の例などが取り上げられ、行政と隊員の連携不足が指摘されている。

隊員数多過ぎでコミュニケーション不足、活動内容と地域要望のミスマッチが原因とされる。隊員の意義や活動目的についての説明不足や住民との徹底的なコミュニケーションが求められている。

行政や隊員にとっても課題が多い状況で、途中退任率が高い自治体ではOBが運営する支援センターやインターン制度を導入し、連携を図ろうとする動きも見られる。より円滑な関係構築のためには現状共有と修正の重要性が示唆される。

地域おこし協力隊 3割が途中退任 特産品開発のはずが店番のみ◇住民から「税金の無駄遣い」 背景に地域の無理解やミスマッチ 鹿児島県内

 地方に移住して活性化に取り組む「地域おこし協力隊」は制度開始から15年を迎えた。南日本新聞の調べによると、姶良市を除く鹿児島県内42市町村がこれまで559人の隊員を採用。29.2%の163人が任期途中でやめ、6自治体で退任者が過半数を占めた。背景には隊員と受け入れ先が求める活動のミスマッチがあるとされ、専門家は行政側に支援態勢の強化を呼びかける。

 総務省によると、任期を終えた県内隊員の定住率は2023年度末で62.6%。ただ任期途中の退任者は含まれず、実態を反映していないとの指摘もある。

 途中退任率は10%以下が11自治体、10%台3自治体、20%台12自治体、30%台8自治体、40%台と50%台が各2自治体、60%台4自治体だった。各自治体によると、退任理由は「活動のミスマッチ」「地域、行政との関係が築けない」が多かった。

■税金の無駄遣い

 関東から移住して隊員となった30代男性が自治体から求められた活動は特産品開発。受け入れ先店舗では「そんな話は聞いていない」と商品開発を許されず、店番のみ任された。自治体職員に相談しても誠実さが感じられず定住の道筋が描けなくなり、予定した3年を待たず1年半で退任した。

 隊員活動2年目の30代女性は住民から「税金の無駄遣い」と言われ、ショックを受けた。住民との関係を構築できず隊をやめた知人もいる。「協力隊の目的や意義について自治体は地域に丁寧に説明してほしい」と要望する。

 自治体側も課題を抱える。いちき串木野市企画政策課の谷口弥咲季主事(31)は担当職員の少なさを挙げ、「隊員数が多い時は、十分にコミュニケーションを取れなかった面もあったと思う」と語る。北薩の担当職員は「数年ごとに異動する職員によって、協力隊の活動に温度差があるのも事実」と明かした。

■橋渡し役

 行政と隊員の連携不足が課題となる中、新たな動きも。途中退任率が59.3%の志布志市は、23年度から協力隊OBが運営する市移住・交流支援センターに隊員の伴走支援を委託。隊員と定期的に面談する同センターの田川貴雄さん(41)は「同じ目線で相談に乗り、橋渡し役を担いたい」と話す。

 同市隊員として農業サポートセンターで働く村山剛さん(38)=鹿児島市出身=は、志布志市が設けるインターン制度を利用し、約2週間仕事を体験。「やりたかったことと一致していると確信が持てた」と振り返る。

 地域おこし協力隊全国研修会の講師を務める弘前大学大学院の平井太郎教授(社会学)は「月1回は行政と隊員が現状や課題を共有し、仕事内容や今後のビジョンを修正することが重要」と強調。「国や鹿児島県内でも隊員OBらに支援を委託する制度は整ってきている。行政側は積極的に活用してほしい」と訴えた。

 【用語説明】地域おこし協力隊 人口減少や高齢化が進む地域に移り住み、住民の生活支援、観光情報の発信、農林水産業などに従事する。2009年度に始まった国の制度で、隊員の地域への定住定着を図る狙いがある。鹿児島県内では、任期はおおむね3年。