夏を味わう(8月8日)

AI要約

夏になると、作家池波正太郎さんがナスにごま油を塗って焼き、からし醤油で食べることが紹介される。

夏酒として人気の日本酒は、低アルコールや爽やかな飲み口が特徴であり、業界関係者が20年前に売り出したもの。

会津の蔵元や飲食店では、夏にぴったりの組み合わせを提供する「あいづ食の陣」が行われ、会津トマトがテーマの料理が楽しめる。

 昭和を生きた作家池波正太郎さんは夏になると、ナスにごま油を塗って焼き、からし醤油[じょうゆ]で食べた。〈このときは冷酒[ひやざけ]を湯のみ茶わんで飲む〉(「味と映画の歳時記」)。食通が好んだ夏野菜と酒の相性は折り紙付きだろう▼当時、「夏酒[なつざけ]」はなかった。夏場に需要が伸び悩む日本酒の消費を喚起しようと、業界関係者が20年近く前、売り出したのが始まりだ。低アルコール、発泡感、あるいは程よい酸味…。よく冷やすのがお勧めで、爽やかな飲み口がくせになる。実は厳密な定義はない。ロック、炭酸割りなど飲み方も自由だ▼会津の各蔵元も主力商品として力を入れる。涼しげな瓶やラベルが目を引く。どんなつまみが合うだろう。会津若松市の飲食店などが季節の特産物を使い、それぞれの店舗で料理を提供する「あいづ食の陣」は、今なら会津トマトがテーマ食材だ。蔵元や店主も太鼓判を押す。旬の組み合わせほど格別なものはない▼県内各地でも30度を超える炎天が続く。宵の口。ビールもいいが、ここは冷やした酒で一献傾けたい。池波さんの粋な作法をまねて、素材と向き合い、じっくりと。粋な涼味に身を委ねれば、盆地の酷暑も乗り切れる。<2024・8・8>