【南湖史跡名勝100年】来訪者の心をつかめ(7月27日)

AI要約

白河市の南湖公園は国史跡・名勝に指定され、今年100年を迎えた。市は市民が共有できる将来像を描くための基本構想づくりを進めている。

市は南湖公園の潜在的魅力を生かすため、さまざまな振興手段を講じてきた。保存利活用に関する計画を策定し、市道南湖線の車両対応や観光振興に取り組んでいる。

観光でも活発な動きを見せる南湖公園。新1万円札の渋沢栄一とのゆかりや夏の甲子園での活躍など、地域の誇りとなる要素が多く詰まっている。

 白河市の南湖公園が1924(大正13)年に国史跡・名勝に指定され、今年100年を迎えた。市は今年度、市民が共有できる南湖の将来像を描くための基本構想づくりを進めている。貴重な歴史遺産の保存に軸足を置きつつも、新1万円札にゆかりの深い南湖神社を持つ観光資源として、来訪者の心をつかむ視点を織り込むことが望まれる。

 市は南湖公園の潜在的魅力を生かそうと、さまざまな振興手段を講じてきた。南湖公園は国史跡・名勝であり、県立自然公園にも指定され、農業用ため池でもある。そのため文化財保護法に加えて都市計画法や都市公園法、自然公園法などが適用される。市は多様な「顔」を持つ南湖を担当する専門部署「南湖係」を昨年度、都市計画課内に設けた。それまで各課に分散していた南湖に関する業務を南湖係に移行させた。一元化により業務の効率化が図られ、よりきめ細かな対応が可能になったとされる。

 さらに保存利活用について市は2020(令和2)年、「南湖保存及び利活用に関する計画」を策定した。国道294号白河バイパス整備など直近の現状を踏まえ、課題を指摘し改善を求めている。その一つが市道南湖線の車両への対応だ。車の通過が来訪者の滞在満足度にマイナスの影響を与えていると指摘、回遊経路の確保を提示している。

 市は生活道路であることや周辺店舗への影響を考慮した上で今年度、社会実験を実施し、時限的に一方通行にして交通量を抑制している。主要な役割を担ってきた「保存管理計画書」(2008年)と「史跡名勝南湖公園整備基本計画」(2017年)については、新たな基本構想が更新の方向性を示すことになる。

 観光でも活発な動きを見せる。新1万円札の渋沢栄一は白河藩主松平定信を敬慕し、定信を祭る南湖神社の創建に深く関わった。市は渋沢の出身地・埼玉県深谷市との関係を深め、継続的に事業を展開していく。

 外部の認知度の高まりは、そこに暮らす住民に自信を与える。夏の甲子園で深紅の優勝旗が白河の関を越え、その名が広く知られたことは記憶に新しい。心を尽くして客を迎えることは、定信の南湖築造を支えた「士民共楽」の理念にも通じる。(広瀬昌和)