心を解きほぐす(7月24日)

AI要約

数学の苦手意識について夏目漱石の回想を振り返る。県内の中学生の数学の苦手さや全国学力テストの結果、そして会津若松市教育委員会の取り組みに触れる。

漱石が数学を克服するための心構えや会津大の学生らによる数学サポートティーチャー事業に期待が寄せられる理由を述べる。

会津大学生が教師として学生に接することで親しみが生まれ、数学への不安や苦手意識が軽減される仕組みについて言及する。

 〈数学だけは隣の人に見せて貰[もら]ったのか、それともこっそり見たのか、まアそんなことをして試験は漸[や]っと済[すま]した〉。夏目漱石が振り返る旧制一高の前身、東京大学予備門の入試の一幕だ。回想録「私の経過した学生時代」にある。文豪にも手を焼く科目があった▼県内の中学生も数学は大の苦手なのか。昨年度の全国学力テストの正答率は平均を下回り、都道府県別でワースト2位だった。今年度の結果は間もなく公表される。苦手意識は克服できただろうか▼会津若松市教委は今年度、会津大の学生らを全ての市立中学校と義務教育学校に派遣する数学サポートティーチャー事業を始めた。学生らが放課後や長期休みに教員の授業をサポートしたり、自主学習に付き添ったりする。理系に特化した大学を擁する地域ならではの取り組みに期待は高まる▼漱石は入学後に落第を経験した。気持ちを入れ替え、勉学に励んだと述懐する。心構えは〈非常に注意して教師のいわれるのを聞く〉。世代の近い会津大生が「先生」なら、親しみが湧く。相談もしやすい。難問への不安や毛嫌いが先立っても、心はほぐれていくに違いない。「吾輩は及第点である」となれば、言うことなし。<2024・7・24>