ついマイナス思考になってしまうのはなぜ?脳の中で起きているマイナス思考の本当の原因【脳科学者が解説】

AI要約

脳科学者の西剛志氏によると、マイナス思考や苦手意識は恐怖学習によって形成されるという。脳の扁桃体が不安や恐怖などのマイナス感情を司り、海馬を介して長期記憶に保存される。例えば、スピーチの失敗やテニスのイップスなどは恐怖学習によるものである。

ほぼ全ての人が苦手意識を持ち、そのほとんどは後天的な脳の恐怖学習から生まれている。恐怖学習は神経症傾向を持つ人ほど体験しやすく、痛みの記憶が増える傾向にある。

人はそれぞれうまくいく分野と苦手な分野があり、苦手意識は後天的な原因から生まれることが多い。恐怖学習によって、特定の状況や行動に対する恐怖が脳に刻み込まれている。

ついマイナス思考になってしまうのはなぜ?脳の中で起きているマイナス思考の本当の原因【脳科学者が解説】

マイナス思考になることもありますよね。しかし、脳科学者の西剛志氏は著書『「おとなしい人」の完全成功マニュアル 内向型の強みを活かして人生を切り拓く方法』の中で、「恐怖学習と呼ばれる恐怖(痛み)を脳が認識してしまうことと関係がある」と言っています。一体どういうことでしょうか? その理由を、本書から紹介します。

内向型の人だけでなく一般的に恐怖学習をしているとき、脳の中では、何が起きているのでしょうか。不都合なこと、いやなこと、ひどいことを言われた……。そういうことが起こると、脳にある「扁桃体」という場所が発火します。扁桃体は、別名「情動の中枢」とも呼ばれ、不安・恐怖・悲しみ・怒り・イライラなど、マイナスの感情を司る大切な部分です。

この扁桃体からのイヤな気持ちが大きいほど、その刺激が海馬に伝わり、長期記憶に保存されます。何度もイヤな気持ちを感じることでも海馬が活性化するため、より長期記憶へと移行していきます。たとえば大勢の人の前で、スピーチをしたとします。がんばって準備したのに失敗して恥ずかしい思いをしました。笑われたり、バカにされたりする。

そんな経験があると、「大勢の人の前で話す=怖い!」と脳は学習して、「大勢の前で話すのが怖い」=「自分の性格」というパターンができあがります。すると、人の前に立つだけで緊張するようになったり、不安や恥ずかしさを感じたり……そういったことが自分の一部になっていくのです。スポーツ用語で「イップス」と言われるものがありますが、これも恐怖学習の一種です。

テニスの試合中、大事な場面でサーブを失敗した。そのときの恐怖心や緊張で、大事な場面でラケットを振れなくなったりする選手は多くいます。誰しもそれぞれ、何らかの苦手意識を持っています。たとえば、仕事でうまくいっても、恋愛がうまくいかない。特定の作業や教科だけに苦手意識がある。あるタイプの人が苦手だったり、特定のシチュエーションや場所だけがなぜか苦手ということもあるかもしれません。

どんな人でも、うまくいく分野とうまくいかない分野がありますが、ほぼ確実なのは、うまくいかない分野ほど、苦手意識が多いということです。もちろん、人によっては、生まれつき苦手なものもありますが、私がこれまで2万人以上の人を見てきた限りだと、こうした「苦手意識」の約9割以上は、後天的な脳の恐怖学習から生まれたものだったことがわかっています。

研究していてもう一つ気づいたことがあります。これは苦手意識を多く持つ人に共通していたことだったのですが、ある共通点を見つけたのです。それは、神経症傾向を持つほど恐怖学習を体験しやすく、痛みの記憶が多くなるということでした。