睡眠中に脳が情報処理、井ノ口富山大教授ら仕組み解明 深い眠りで整理、浅い眠りで推論

AI要約

富山大の井ノ口馨卓越教授らは睡眠中の脳の情報処理仕組みについて研究し、ノンレム睡眠では記憶を整理し、レム睡眠では新しい知識を獲得することを明らかにした。

具体的にはマウスを用いた実験で、睡眠が学習に及ぼす影響を調査。睡眠中に神経活動、特に大脳皮質の活動が学習の効果に関与していることを示した。

研究結果は睡眠が問題解決につながる可能性があり、将来的には睡眠中の脳を刺激することで能力を引き出す方法が開発されるかもしれない。

睡眠中に脳が情報処理、井ノ口富山大教授ら仕組み解明 深い眠りで整理、浅い眠りで推論

 富山大の井ノ口馨卓越教授(神経科学)らは24日、睡眠中に脳が情報処理する仕組みを突き止めたと発表した。深い眠りの「ノンレム睡眠」で既存の記憶を整理し、浅い「レム睡眠」で学んでいないことを推論して答えを導くことを明らかにした。

 研究ではA~Eの5部屋を用意。マウスに「A―B」「B―C」「C―D」「D―E」のペアを示し、アルファベット順が早い方に入れば報酬を与える学習作業を2週間繰り返した。その後「B―D」という初めて見せるペアで、正解できるかどうかを試験した。

 学習直後の試験の正答率は50%だったが、一晩眠ると80%に上昇した。一方で睡眠を妨げると正答率は上がらなかった。さらに睡眠中に脳内の大脳皮質の神経活動を人為的に抑えると、正答率は上がらなかった。

 大脳皮質の神経細胞の活動を調べると、ノンレム睡眠中にAからEまでの記憶を整理し、レム睡眠中にBとDの関係を推論していた。また学習期間を短くしても、レム睡眠中の神経活動を促進すれば正答率が上昇することを確かめた。

 井ノ口教授は「悩み事や課題がある時は一度眠ることで解決につながりやすいと言える。将来的には磁気などで睡眠中の人の脳を刺激することで、潜在的な能力を引き出せるようになるかもしれない」と話した。

 研究成果は24日に、英科学誌「ネイチャーコミュニケーションズ」のオンライン速報版に掲載された。