意識をコンピュータにアップロードする手順を紹介しよう。カギは、生体脳半球と機械半球の意識の統合と、記憶の転送だ!

AI要約

脳の電気回路としての振る舞いを機械に再現することで意識を移植できる可能性がある

意識のアップロードにより仮想現実の中で生き続けたり現実世界に戻ることが可能になる

提案された意識のアップロード実験では脳半球に新型BMIを挿入し、意識が二分される

意識をコンピュータにアップロードする手順を紹介しよう。カギは、生体脳半球と機械半球の意識の統合と、記憶の転送だ!

 意識を宿す脳は、すこしばかり手のこんだ電気回路にすぎない。であれば、脳の電気回路としての振る舞いを機械に再現することで、そこにも意識が宿るに違いない。多くの神経科学者はそう考えている。

 問題は、ヒトの意識のコンピュータへの移植、いわゆる「意識のアップロード」である。仮にそれがかなえば、ヒトが仮想現実のなかで生き続けることも、アバターをとおして現世に舞い降りることも可能になる。どちらを選択しても、生体要素が一切排除されるため、死が強制されることもない。

 はたして意識のアップロードは原理的に可能か? その技術的目処は立っているのか? この研究を続ける渡辺正峰氏の最新刊『意識の脳科学――「デジタル不老不死」の扉を開く』から一部を抜粋して紹介する。

 わたしの提案する意識のアップロードを体験してもらおう。第一段階は、生体脳半球と機械半球の意識の統合だ。

最初に、提案する新型ブレイン・マシン・インターフェース(BMI)をあなたの脳に挿入する。開頭手術を行い、小分けしたBMIを左右の脳半球を結ぶ三つの神経線維束に挟み込んでいく(図5-1)。二つの脳半球の間には細かな血管が多く通うため細心の注意が必要だ。

 とはいえ、重度のてんかん患者に対して、三つの神経線維束を切断する脳梁離断術が現在でも施されている。友人の脳外科医から、BMIを細分化することで問題なく挿入可能との太鼓判をおしてもらっているので心配はご無用だ。

 ただ、ここで一つ残念なお知らせがある。BMIが挿入された時点で、あなたの意識は二つに分断される。脳梁離断術が施された後の、いわゆる、分離脳の状態だ。

 仮に、あなたが、あなたの左脳に宿る意識だったとしよう(右脳のあなたは言語野をもたないため言葉を解さない……)。あなたは世界の右側しか見えず、身体の右側しか感じられない。なにかと不便はあるだろうが、なにも死ぬわけではない。不老不死に向けて避けて通ることのできない通過点だとあきらめ、しばし我慢してほしい。