[山口県]宇部市に飼料工場完成国内初、国産トウモロコシが原料 地域内循環の農畜産業へ

AI要約

国内初となる国産飼料用トウモロコシを原料とした飼料を製造する工場が宇部市山中に完成。

工場は、牛や乳牛などの畜産種に対応した飼料を製造可能で、年間最大製造能力は868トン。

地元産飼料で高付加価値の畜産物を生産し、地域内での循環型生産に取り組む山口子実コーン協議会が設立された。

[山口県]宇部市に飼料工場完成国内初、国産トウモロコシが原料 地域内循環の農畜産業へ

 国内初となる国産飼料用トウモロコシを原料とした飼料を製造する工場が宇部市山中の農業法人、あぐりんく(伊藤英穂社長)の敷地内に完成し、4日に行政やJAなどの関係者が集まって落成式があった。耕作放棄地と堆肥の活用、地元産飼料で育てた高付加価値のある畜産物の生産により、持続可能な農畜産業の土台となることが期待される。

 工場の名称は「やまぐち国産飼料用トウモロコシ高度利用化センター」。運営するあぐりんくによると、大型の乾燥機2台、粉砕機1台、混合機1台を備え、肉用牛や乳牛などの飼育畜種や、舎飼いや放牧など畜産の経営形態に対応する飼料をきめ細かに製造できる。総事業費は農作業車や保存施設などを含め約4億円。試運転を経て近く稼働する。

 年間の最大製造能力は、牛約250頭分の約868トン。製造計画は当初200トンで、飼料用トウモロコシの作付面積と製造した飼料の供給先を拡大して段階的に増産し、2028年に360トンまで引き上げる予定。

 宇部、山口の両市では、耕種農家や畜産農家だけでなく、飲食・小売事業者が参画して山口子実コーン協議会を組織。飼料用トウモロコシを生産、飼料製造、畜産物の生産など地域内での循環型生産による農畜産業の振興に取り組んでいる。輸入に依存している状態の飼料用トウモロコシは円安やロシアによるウクライナへの軍事侵攻、アジアを中心とした肉食の増加によりさらなる価格高騰が予想され、飼料の地産地消は安定生産と価格面でも注目される。

 あぐりんく取締役で協議会の会長を務める工藤正直さん(52)は落成式で、協議会が掲げる真の地域内循環・消費の実現に向けて長年の課題だった飼料製造が可能になり、飼料用トウモロコシの作付面積が拡大したことを紹介。安定して入手できる国産飼料用トウモロコシの生産に対する期待が高まっていることから、今後は山口県全域を対象に事業拡大を図っていく意向を示し、「生産から消費まで全ての人々が安心、安全で安定した食生活が行える環境を地域につくり上げ、みんなで豊かな暮らしを実現できるように取り組みたい」と抱負を述べた。