入湯できる国重要文化財「道後温泉本館」:日本最古の湯に癒やされ、皇室や文豪ゆかりの部屋を観賞

AI要約

明治・大正時代に建てられた道後温泉本館の保存修理工事が完了し、日本最古の湯を楽しむことができるようになった。

道後温泉は愛媛県を代表する観光地であり、古きよき風情が漂う温泉街として知られている。

夏目漱石の小説『坊っちゃん』に登場する本館は、漱石や正岡子規など多くの文豪や貴人が訪れた名湯であり、重要文化財でもある。

入湯できる国重要文化財「道後温泉本館」:日本最古の湯に癒やされ、皇室や文豪ゆかりの部屋を観賞

夏目漱石の小説『坊っちゃん』に登場する「道後温泉本館」(愛媛県松山市)で7月、5年半にわたった保存修理工事が完了した。明治・大正時代の香り漂う建物で、日本最古の湯を楽しもう!

愛媛県を代表する観光地「道後温泉」。松山市の中心部から2キロの温泉街には、旅館や郷土料理の店が連なり古きよき風情が漂う。

日本最古とされる湯は、傷を負った白鷺(しらさぎ)が湯あみして元気になったことが起源と伝わる。神話時代にはオオクニヌシとスクナヒコナ、飛鳥時代の聖徳太子や斉明天皇をはじめとする貴人も来浴したという。『万葉集』『日本書紀』『源氏物語』といった奈良~平安時代に成立した古典籍にも名湯と記述されている。

しかし、なんといっても道後温泉で多くの人が思い浮かべるのは、明治の文豪・夏目漱石の代表作『坊っちゃん』であろう。1895年に松山の中学校に赴任した漱石の実体験に基づき、その前年に改築したばかりの公衆浴場「道後温泉本館(以下、本館)」が登場する。新任教師の「おれ」が湯船で泳いだことを注意され、生徒たちにからかわれる場面は笑いを誘う。

街を走る路面電車「坊っちゃん列車」、名物「坊っちゃん団子」も小説にちなむものだ。

漱石の親友で松山出身の俳人・正岡子規も同時期、病気療養のために温泉通いをしていた。2人が風呂上がりに休憩した本館の個室は「坊っちゃんの間」として漱石の胸像や写真を展示している。

本館は3階建てで、1894年から1935年にかけて完成した4棟で構成された複合建築。外観は城や社寺を思わせる。近代の温泉場の姿を伝える建築物であり、1994年に公衆浴場では初の国の重要文化財に指定された。

本館を未来に残すため、運営する松山市は2019年1月から耐震化などの保存修理工事を実施、休憩所は閉めて浴場のみの営業とした。道後温泉のシンボル的存在は工事用シートに覆われ、コロナ禍が重なった時期には温泉街は静まり返っていた。24年7月11日に全館で営業再開した際は、一番風呂を狙って前夜から並ぶ人が出たことで話題を呼び、現在はにぎわいを取り戻している。