京都四条駅近くにたたずむ「ラオス料理 YuLaLa」、自家製発酵調味料とハーブで作る滋味深き料理
ラオス料理店が京都にある。ラオス料理の特徴や素材の使い方について紹介。
ラオス料理の調理法や特徴的な料理の紹介。自家製の魚醬やパデークの使用など。
日本酒とラオス料理の意外な相性について。滋賀とラオスの食文化の共通点に驚き。
取材・文=岡本ジュン 撮影=村川荘兵衛
■ 東南アジア最後の楽園と呼ばれたラオスの料理を日本で
京都という街は本当に奥深い。そして面白い。だってこんな店が隠れているのだから。
今回紹介するのはラオス料理店だ。ラオス料理と言われて「なるほどアレね」となる人はなかなか少ないだろう。そこでちょっとラオスのおさらいをしてみたい。ラオスはタイとベトナムに挟まれた位置にあり、北を中国、南をカンボジアに接している。
料理にハーブや発酵調味料を使うというのは、アジア諸国と似ているが、「ラオス料理は砂糖や調味油をほとんど使いません。その分、ライムの酸味や発酵調味料の塩味と旨み、フレッシュハーブの香りをきかせて、素材の持つ本来のおいしさをいかした味わいに仕立てるのが特徴です」と店主の岡田尚也さんは話す。
■ 滋賀とラオスの食文化が似ていたのは意外な発見
実際に食べてみると、淡い中にもハーブや発酵のうまみが重なり合って、複雑にして奥深い。しかも翌日に体がすーっと軽くなって、なんだか調子が良くなったように感じられた。
例えばこんな料理だ。鶏肉の香草和えの『サーカイ』は鶏の胸肉、スナギモ、ハツなどと柑橘系のハーブを合わせて、自家製の魚醬をタレに使っている。『オラーム』という牛肉となすのスープは、淡水魚をぬか漬けにしたパデークというみそのような発酵調味料で味をつけている。
こちらの料理がとても澄んだ味なのは、魚醬やパデークなどの調味料を琵琶湖の淡水魚を使って自家製しているからだ。ラオスよりも涼しい日本では、向こうでは半年でできる調味料が2年かかることもある。それでも余分なものが入らないピュアな調味料は味の骨格を定めるためには重要だ。岡田さんの両親が極力農薬を使わず、丁寧に育ててくれるハーブ類はフレッシュで香りがよく、それも味の決め手のひとつ。辛さや塩気は比較的穏やかで日本人にもなじみやすいのもいい。
「周辺諸国は屋台文化が発達していて、朝ごはんも屋台で買うのが当たり前のような風潮がありますよね。でもラオスはそうではないんです。食事は自宅で作ることが多い」と岡田さん。だから素朴だけど、日々の感謝が料理に生きているのかもしれない。
驚いたのは、店に日本酒がずらりと並んでいること。実は岡田さんは日本酒好きだそうで、ラオス料理は日本酒と合うというから面白い。
「力強さが特徴的な滋賀のお酒なら合うのではないかと勧められたのがきっかけで す。実際に試してみたら抜群の相性で、それ以来、滋賀の日本酒を中心に置くこ とにしています。なぜこんなにもラオス料理と滋賀の日本酒が合うのか考えてみると、海のないラオスは淡水魚文化であり、発酵文化も豊かです。
琵琶湖のある 滋賀も淡水魚を発酵させて作るふなずしなど、共通する食文化が多い 『YuLaLa』に限って言うと、自家製の発酵調味料に使う淡水魚も琵琶湖産ですし、もち米も滋賀の長浜産の減農薬米を使わせてもらっているため、その親和性 はさらに高くなっていると思います」。
たしかに魚を使った発酵調味料なら日本酒に合わないわけがない。滋賀とラオスの意外な関係が見えてきた。