「え? 掘られたんですか? あの隧道を?」現地住民への聞き込みで初めてわかった“世にも不思議な隧道”が建設された“納得のいきさつ”

AI要約

石川県七尾市に位置する此ノ木隧道(ずいどう)は不思議な隧道で、行き止まりになっている。隧道が掘られた理由を解明するため、隧道を造った亀喜勲さん(82)に話を聞くと、隧道は17、18歳の若者たちがボランティアで掘ったものだった。

集落から畑へ行くための道を作るために、地域の住民が隧道を掘った。作業は各家ごとに分担され、手押しトロッコや家庭の道具を使って、約2年かけて完成させた。

隧道の建設には特に報酬はなく、協力して作業を行った。隧道の完成後、集落から隧道に続く道も造られ、地域の交通が改善された。

「え? 掘られたんですか? あの隧道を?」現地住民への聞き込みで初めてわかった“世にも不思議な隧道”が建設された“納得のいきさつ”

〈内部にはナゾの屋根、通り抜けた先は行き止まり…石川県七尾市の集落にポツンとある“独特すぎる隧道”を訪れてみた〉 から続く

 石川県七尾市に位置する此ノ木隧道(ずいどう)。人や車両の往来も少なく、トンネルを抜けた先は行き止まりになっている。この不思議な隧道はいったい誰がどのような目的で掘ったのか。記録が残っていないことまでは突き止めたられたが、その理由がわからず、気になって仕方ない。

 ここからは、現地の方への聞き込みを行ったもようを紹介していく。

◆◆◆

 何度見ても素敵な此ノ木隧道だが、今回の訪問の主目的は隧道が掘られた理由の解明。ゆえに情報を見つけなければならない。記録が残っていないとすれば、人に話を聞くしかない。完成が昭和35年なので、ギリギリ当時を知る人がいるかもしれない。

 そう考えながら集落に戻ると、ちょうど道端に、いかにも昔のことを知っていそうな男性が立っていたので、声をかけた。

「この先にある此ノ木隧道のことを調べてまして。隧道のことはご存知でしょうか」

「もう60年前になるかな。畑に行くための道やね。その工事しとったんやけど」

「え? 掘られたんですか? あの隧道を」

「おれが造った、立ち上げからずっと。17、18歳の時に」

 なんと、最初に声をかけた方が、此ノ木隧道を掘ったという方だった。計画の立ち上げから隧道の完成まで、全てに関わったという亀喜勲さん(82)に詳しく話を聞く。

 亀喜さんによると、当時、山の一部が農地になっており、集落から畑に行く道がほしいということになった。そこで、地域の住民だけで隧道を掘ったというのだ。各家ごとに作業を分担して、割り当てられた作業を行った。報酬をもらった記憶はなく、今でいうボランティアだったそうだ。

 隧道の手前までレールを敷き、手押しトロッコで掘った土を運んだ。運び出した土を利用し、集落から隧道に繋がる道も造ったという。専用の道具はなく、農家だった家にあるショベルやクワを使って作業した。完成までに2年ほどを要したという。

 道を造るというのは容易ではなく、こんな秘話も教えてくれた。