内部にはナゾの屋根、通り抜けた先は行き止まり…石川県七尾市の集落にポツンとある“独特すぎる隧道”を訪れてみた

AI要約

中心部の隧道が珍しい理由とは?

山奥に突如現れる神秘的なロケーション

隧道の高さ制限標識の謎に迫る

内部にはナゾの屋根、通り抜けた先は行き止まり…石川県七尾市の集落にポツンとある“独特すぎる隧道”を訪れてみた

 能登半島の中心部である七尾市に、「此ノ木隧道(ずいどう)」と呼ばれる“なんとも珍しい隧道”がある。そんな話を聞いたのは、数年前のことだった。

 隧道とはトンネルのことで、古くからあるトンネルが隧道と表記されるケースが多い。能登半島の付け根にあるそれは、国内外を見渡しても他に例がないほど、珍しい隧道なのだという。気になった私は現地に向かった――。

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 石川県七尾市大田町の小ぢんまりとした集落から、山へ向かって一本道を進むと、次第に人家も見えなくなる。山林の中に田んぼだけが広がるのどかな風景のなか、対向車とすれ違うことができない細い道が続いている。

 細い道から左折すると、アスファルトがなくなり未舗装路となった。軽自動車でも道幅に余裕がないガタガタの道は、ゆるやかに斜面を登ってゆく。

 本当に車で行けるのか? 不安になりながらも運転を続けていると……坂道の先に突然、隧道が現れた。

 左右は山に囲まれ、深い切り通しになっている。正面の山の斜面に、隧道がぽっかりと口を開いている。とても神秘的なロケーションだ。

 これだけで最高である。が、さらに、隧道の中に見える丸太で組まれた屋根のようなものも気になる。隧道内に収まっている屋根の上部には、高さ制限2.7メートルを示す道路標識が掲げられ、圧倒的な存在感を放っている。このシチュエーションで道路標識。違和感しかない。異彩そのものだ。

 予想をはるかに上回る神秘的かつ珍しい隧道が出現したものの、あまりにも情報量が多く、理解が追い付かない。一つずつ整理していこう。

 未舗装の1車線ぎりぎりの上り坂、深い切り通しの先にあった隧道。隧道内部はコンクリートで固められることなく、素掘りの状態。隧道の中には、丸太を組んだ東屋のようなものが見える。そして、隧道には高さ制限の標識が掲げられている。

 道路標識は道路交通法に基づいて設置されるもので、個人が勝手に設置すると違法行為になってしまう。つまり、この隧道はきちんと管理され、公安委員会が高さ制限標識の必要性を認めたということになる。こんな山奥の未舗装道路、しかも素掘りの隧道に……いったいなぜなのか。