動揺してストレスを感じた時はどうすればいいのか?【科学が証明!ストレス解消法】
猛暑と大気不安定な状況下での災害時の対応とストレス解消法について
「EFT」というストレス解消法が効果があることが研究で示されている
自問自答や言語化することでセルフコントロール能力が向上し、正しい判断ができるという研究結果
【科学が証明!ストレス解消法】#178
酷暑とも言える猛烈な暑さが日本列島を襲っています。それに伴い、大気が不安定となり、各地でゲリラ豪雨や線状降水帯が発生しています。大雨による被害も珍しくなくなっているため、災害時にどのような対応を取ることが望ましいか。さらには、万が一、こうした状況に遭遇した場合、心のケアやストレスとの向き合い方も重要になってくるでしょう。
ベングリオン大学のクロンドが2016年に行った、EFTに関する過去の研究を総合的に検討した「メタ分析」(複数の研究結果を統合し分析すること)によると、EFTは不安解消に効果があると結論づけています。
EFTとは、おでこや目の下、顎、鎖骨などをトントンと軽く叩く(タッピングする)ストレス解消法のこと。セルフコントロールをする際に、おでこをトントンと30秒ほど叩くと、欲を抑え理性が働きやすくなることが明らかになっています。
人がストレスや不安を感じるのは、脳の一部の“扁桃体”に起因します。この扁桃体がマイナス信号を感じると、発汗やふるえ、イライラなどを引き起こすようになります。
マイナス信号を止めるためには、ゆっくりと呼吸をするなど意識を安定させること。そして、「今自分はストレスを感じている」と客観的に認知することで、扁桃体の過剰な活動を抑制することができます。理性を働かせるように脳を仕向けることがポイントというわけです。
理性を働かせる上で覚えておいてほしいのが、言語の力です。たとえそれが、脳内のつぶやき(独り言)であっても、効果はてきめんです。もしもストレスを抱え、何か問題に直面しているなら、自問自答して、思っていることを言語化してみてください。
トロント大学のチュレットとインズリクトの研究では、自問自答するとどのような効果があるのか実験(2010年)を行っています。
チュレットとインズリクトは、被験者を2つのグループに分け、あるテストをしてもらいました。2つのグループとは、下記のものです。
【グループA】「自分のやろうとしている行動は正しいのか? 間違いのない選択か?」と自問自答したグループ
【グループB】利き手ではない手で円を描き続けさせられ、自問自答できない状態にしたグループ
双方のグループに、指定された色の図形が表示されたらボタンを押すという課題をさせたところ、グループAは通常時より30%ほど正答率が高くなったそうです。対して、独り言を封じられたグループBは変わらなかったといいます。つまり、自問自答することで、正しい判断ができるようになる傾向が高まることがわかったのです。
チュレットとインズリクトは、「脳内の独り言」を使えない場合は、より衝動的に行動しやすくなると指摘し、自分の行動を言語化して自分に伝えられないと、セルフコントロール能力が低下してしまうと話しています。
言語化することは、自分の心の交通整理がしやすくなり、解決までの糸口をつかみやすくしてくれます。何かが起きて心が動揺したときは、上記で説明したセルフコントロールを試してみてください。
(堀田秀吾/明治大学教授、言語学者)