吊り革は3本指で持つ、階段は太腿の後ろで上る……これが腕や腰の負担を激減させる「日常の古武術」です

AI要約

日本人が培った武術の知恵を活かすことで、身体の負担を軽くし、痛みを和らげることができる。

古武術の立ち方や歩き方を取り入れることで、骨や関節の可動域を回復させ、慢性的な痛みを解消する効果がある。

日常生活に古武術の動きを取り入れることで、新しい身体感覚を養い、健康をサポートすることができる。

吊り革は3本指で持つ、階段は太腿の後ろで上る……これが腕や腰の負担を激減させる「日常の古武術」です

健康のためと筋力を高めても、その使い方を間違えれば、身体に大きな負担がかかり、痛みと疲れを呼ぶ。日本人が培った武術の知恵を使えば、無駄のない所作になる。新しい自分に生まれ変われるのだ。

「たとえば、電車やバスで立つとき、吊り革を五本指でしっかり握りしめていないでしょうか? これは胸から腕にかけての筋力だけで強引に安定を保っている状態のため、片手や腕に過剰な負担がかかります。

中指と薬指、小指で吊り革をゆるく持ってみると、指から腕、肩甲骨から胴回りまでの筋膜のつながり全体が身体を支えるので、腕の負担が軽減され、ふらつきにくくなります」

そう語るのは、身体教育家で『日々の暮らしに活かす古武術の知恵』の監修者でもある、林久仁則氏である。

日本に伝わる古武術の鍛錬、稽古を続けて20年になるという林氏は、日常生活に古武術の動きを取り入れるだけで、身体の負担を軽くできるという。

そればかりか、肩甲骨や骨盤などの骨や関節の可動域を回復させるので、血流がよくなり、肩こりや腰痛などの慢性的な痛みも解消されるというのだ。

身体の痛みを和らげるためにも、古武術が教える身体の動かし方を手軽に実践してみよう。

基本姿勢の立ち方で大切なのは、「上虚下実」の状態である。

「学校で習った『気を付け!』とは真逆の姿勢です。肩を張らずに上半身の力を抜き(上虚)、骨盤がゆるやかに後ろに傾き、身体の重心が自然と下半身に落ちている(下実)のが、古武術的な立ち方なんです」(林氏)

その姿勢から歩き出す際には、何を心掛ければよいだろうか。

普通の歩き方は、身体の重心が上下して疲れやすく、膝や足裏への負担も大きいと林氏は語る。

「歩くたびに頭の位置が上下したり、ドスンドスンと足音が鳴るのは、全身が連動していない証拠。重心が下にあり上下動が少ないので、足音が出にくいのが古武術的な歩き方です。

そのポイントは仙骨。身体の重心に近い仙骨の先端部分を前に出すように歩くと、腰も自然と前に出て歩行スピードが上がります」

古武術初心者にとって全く意識しない仙骨を動かすのは難しい。そこで最初は、片手でげんこつをつくり、お尻の割れ目の上端を少し押しながら歩くと感覚が掴めてくるという。もちろん、誰かにげんこつを当ててもらって歩くのもよい。