アニサキスには正露丸が効く…実証した高知大教授がさらなる調査 飲んで「痛み改善」が約8割

AI要約

正露丸はアニサキスの運動を抑制し、死んだ状態にすることが新たな研究で示唆されている。

研究では、正露丸を使った胃内の実験でアニサキスの死が確認され、正露丸がアニサキスによる食中毒の対策になる可能性が示された。

しかし、胃の奥深くにアニサキスが入り込んでしまうと正露丸の効果が限定されるため、症状が続く場合は速やかに医療機関を受診する必要がある。

アニサキスには正露丸が効く…実証した高知大教授がさらなる調査 飲んで「痛み改善」が約8割

 食あたりや消化不良、下痢などの時に服用する正露丸。あの独特のにおいの元であり、正露丸の主成分「木クレオソート」がアニサキスの運動を抑制する──。正露丸を製造販売する大幸薬品(大阪市)がこんな研究結果を発表したのが2011年だ。14年には、同社は正露丸・アニサキス関連の特許を取得している。21年、アニサキスと正露丸について新たな研究発表をしたのが、高知大学理工学部の松岡達臣教授らの研究グループだ。このたびさらなる調査結果も発表したので、それも含めて紹介しよう。

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 アニサキスは、寄生虫の一種。アニサキスが寄生している魚介類を刺し身や不十分な加熱で食べると、アニサキスによる食中毒を起こしかねない。

「正露丸がアニサキスの運動を抑制するというのは、アニサキスが麻痺して動かなくなっているのではなく、死んでいるのではないか? それを突き止めた論文がなかったので研究を行いました」(松岡教授=以下同)

 松岡教授らはまず、30㏄の液体に3錠の正露丸を溶かした。30㏄というのは空腹時の胃液の量と同等で、「1回3錠」という正露丸の用量に従った。そこにアニサキスを30分間浸し、トリパンブルー染色を行った。

「トリパンブルー染色は、細胞が死んでいるかを判定する方法で、死んでいる場合青く染まります。正露丸処理で動かなくなったアニサキスは、トリパンブルー染色24時間後には90%が、48時間後には100%が青く染まり、死んでいることが明らかになりました」

 アニサキスは胃酸や胃の消化酵素に耐性があり、胃の中でも1週間近く生きられる。トリパンブルー染色で青く染まった(死んだことが確認された)アニサキスは、その後どうなるのか?

 松岡教授らは、胃液と同じ濃度のペプシン液(胃液のモデルでタンパク質を分解する)に「正露丸処理したアニサキス」と「何もしていないアニサキス」を入れた。

 すると、正露丸処理したアニサキスは24時間以内に分解が始まった。一方、何もしていないアニサキス(生きたアニサキス)は元気に動き続けた。

■2~3分で痛みが消えたという声も

「正露丸が完全に胃の中で溶けている状況であれば、アニサキスを正露丸の通常の服用量で殺すことができる。つまり、アニサキスの食中毒対策になる可能性がある。この発表は話題になり、SNSで盛んに取り上げられました。そこで私は、2015年4月4日から23年6月13日までにSNSに投稿されたアニサキスに対する正露丸の効果についての投稿を見つけられるだけ見つけ出し、分析を行いました」

 記述が曖昧な数例は除き、松岡教授が見つけたのは56件。内容を分類すると、「正露丸を飲むことで、アニサキスによると思われる症状が著しく和らいだ/症状が消えた(=効果あり)」という投稿が33件で59%、「多少効果があった」が13件(23%)、「全く効果がなかった」が10件(18%)だった。

「効果あり」の具体例をいくつか挙げると、「刺し身を食べた後、強烈な胃痛が周期的に襲ってきた。正露丸を飲んだところ、2~3分で痛みが消えた」「カツオの刺し身を食べた後、真夜中に強烈な胃痛に襲われた。正露丸を飲むと、翌日病院に行くまでに痛みはほぼ消えた。病院で検査をした結果、動きが止まったアニサキスが見つかり、動いていないので簡単に除去できた」。

 また「多少効果あり」では、「1日は正露丸で我慢できた。次の日には病院で除去してもらった」「痛みが3分の1まで和らいだ」というものだった。

「正露丸が十分に溶けていても、アニサキスが胃の壁の奥深くに入り込んでしまえば、正露丸が溶けた胃液にアニサキスが十分に浸らないので、死なずに生き続けるのではないか。正露丸を飲んでもすぐに痛みが治らなければ、追加して正露丸を飲んだりせず、速やかに病院へ行くべきです。アニサキス以外の可能性もあるので、痛みが治ったとしても、念のため受診することもお勧めします。ただ、正露丸がアニサキスによる食中毒の唯一の薬になり得ることは、間違いないと感じています」

 刺し身を食べる人は、正露丸の常備を。