元ボブスレー五輪代表選手が“サッカー日本代表”遠藤航のトレーナーになった理由

AI要約

遠藤選手とトレーナーの出会いから始まり、リモートでのトレーニング指導までの経緯について述べられている。

トレーナーがリモート指導での課題や工夫した点、遠藤選手のトレーニングへの熱意などが明かされている。

異なる国にいる遠藤選手と日本のトレーナーが協力して、常識を覆す挑戦を続けている様子が伝わってくる。

 「日本人はフィジカルで世界に勝てない」「30歳でビッグクラブへの移籍は難しい」。これらの常識を覆し、世界有数のクラブ“リバプール”で重要な役割を担っているサッカー日本代表キャプテンの遠藤航選手。なぜどのリーグでも活躍することが出来るのか? 

 遠藤選手のパーソナルトレーナーであり、自身もボブスレーで五輪に出場した経験を持つ小林竜一氏のLIVE配信では、そんな遠藤選手の強さの秘密に迫った。今回その中から、遠藤航選手のどこに着目し、どのようなトレーニングを行っているのかついて紹介する。

■ 異色の経歴から遠藤航選手のパーソナルトレーナーヘ

 僕が、遠藤航選手と出会ったのは、2018年のことでした。

 ちょうど遠藤選手が海外進出を目指して、、浦和レッズでプレーしながら語学学習をしていた時期です。偶然、遠藤選手に語学を教えていた方が僕の知り合いで、以前に面白いトレーナーがいると話題にしていたそうで、オンラインで彼の語学レッスン時に、たまたま遠藤選手とお話しすることができたんです。

 最初は、画面上での会話だったのですが、興味本位でどんなトレーニングをしているか聞いたところ、逆に「いいトレーニングがあったら教えてください」と言われて。プロのサッカー選手なので、しっかりとトレーニングされているだろうし、「こういうトレーニングがいいかもしれません」と、当時はいくつか自分で撮った動画を送るくらいでした。

 その後、遠藤選手が浦和レッズから海外に移籍することになり、Jリーグの最終戦に出場するタイミングで、大阪の試合を見に行くことにしたんです。そこで初めて遠藤選手がサッカーをプレイする姿を見たのですが、やはり試合中の躍動感は抜群でしたね。

 でも、試合後にホテルで少し話す機会をいただいて、体の動きを見させていただいた時には、関節の可動域が少し狭いな、動きに硬さがあるなという印象がありました。

 十分に試合で力量を発揮している選手ではあったのですが、トレーニング次第でもっと可動域を獲得できるのではないかと感じました。

 遠藤選手からも、特に鍛えたい部位の指示などはなかったのですが、「フィジカルの要素をすべて向上させたい」という相談を受けて。フィールドでプレイしている時と、実際に身体を見た時の違和感を解消すれば、パフォーマンスは向上すると僕はイメージすることができました。

 それまでサッカー選手のトレーニング指導はしたことがなかったのですが、僕自身もボブスレーの元日本代表として活動していたので、どこまで遠藤選手のプレイに貢献できるかと考えながら、パーソナルトレーニングの仕事に挑戦することにしました。

■ コロナ禍で行われたリモートでのトレーニング指導

 本格的にトレーニングを始めたのは、遠藤選手がドイツのブンデスリーガに移籍した時期です。その頃は、コロナ禍ということもあり、初めてリモートで指導することになって、週に1~2回くらい画面越しでトレーニング指導をしていました。

 最初は、リモートでどの程度できるか不安がありました。想定していた状態よりはスムーズにできたのですが、こちらの想像力だけでは補えない部分が多くあると実感しました。

 たとえば、僕がトレーニングの動きを見せても、ディテールを伝えることができない。いくつかの角度で撮影をしないと動きを理解してもらえず、対面での指導に比べてスムーズにいかないことばかりで。そういう時は、正面、横側、後方の3つの方向から撮影するなど、さまざまな試行錯誤を繰り返しました。

 ほかにも、僕にはわかる言葉であっても、遠藤選手にはわからない表現などがあって、その都度、言葉を選びながらコミュニケーションを取っていました。なので、通常の対面でやるトレーニングよりも、多くの時間と労力を要しましたね。

 また、遠藤選手がドイツにいた時期は、僕の活動拠点は日本の鳥取県鳥取市でした。8時間ぐらいの時差があるので、トレーニングの日時を決めるのも大変でした。遠藤選手がチームの練習を終えて、あちらの昼3時くらいにトレーニングをしたいとなると、日本はだいたい23時くらいです。

 試合の日程に合わせて、数日前からトレーニングの依頼を受けるので、お互いにスケジュールの調整をしながら日時を決めて。僕はいつも日本時間の23時から深夜2時くらいまで、リモートで遠藤選手のトレーニング指導をしていました。