言語感覚が敏感になる「2歳」にはザラザラくすぐったい「すなもじ」が効く

AI要約

マリア・モンテッソーリが考案した「砂文字板」は、モンテッソーリ教育の一環であり、触覚を使って文字を覚える手法である。

「すなもじ」シリーズの絵本は、手軽にモンテッソーリの言語教育を体験できることで注目を集めており、3冊のラインアップが10万部を突破するヒットとなっている。

モンテッソーリ教育では、敏感期を利用して子どもの成長を促進することが重要であり、文字に対する敏感期は2歳から6歳ごろまでの間にある。

言語感覚が敏感になる「2歳」にはザラザラくすぐったい「すなもじ」が効く

「砂文字板」という教材をご存じだろうか。文字通り、ざらざらの砂で文字を形作ったもので、医師で教育家でもあったマリア・モンテッソーリが考案した教育法である「モンテッソーリ教育」で使われる。目で見る「視覚」、耳で聞く「聴覚」に加え、指でなぞる「触覚」を使うことで、文字を正しく覚えていくことができるという。子どもには生まれつき自分自身を成長させる力が備わっていて、大人は子どもの興味や発達段階を正しく理解して、力を引き出せるように環境を整える、というモンテッソーリ教育の考え方に基づくものだ。

■10万部突破の「すなもじえほん」とは?

 この「砂文字板」が、「しののめモンテッソーリ子どもの家」の監修で「すなもじ」シリーズという絵本になった。2023年8月にひらがなを収録した『すなもじあいうえお』が発売されると、家庭で手軽にモンテッソーリの言語教育を体験できると話題に。

 実際に4歳の娘のためにこの本を購入したという女性(41)は、「家庭で行うには教具が高価なのでハードルが高く、絵本という簡単に取り入れられる形で出版されたことはとてもうれしい。本屋でたまたま見つけたときは感動しました」と話す。また、別の女性(34)も「自閉症の4歳の息子に購入しました。まだ言葉を話せない分、文字でコミュニケーションがとれたら、と思ったんです。文字が大きく書き順もあって、指先を刺激しながら学べます。息子も興味を持って、楽しみながら指でなぞっています」と話している。

 24年8月には、『すなもじカタカナ』『すなもじABC』も発売されて3冊のラインアップがそろい、1年足らずでシリーズ累計が10万部を突破。知育絵本としては異例のヒットとなっている。

■「ABC」よりおろそかになりやすい「カタカナ」

 1989年9月に東京都目黒区柿の木坂に「モンテッソーリ幼児教室」を開設して以来、30年以上にわたり、日本でモンテッソーリ教育を実践してきた「しののめモンテッソーリ子どもの家」。モンテッソーリ教育では、幼少期に特定のことに対して感受性が敏感になる時期を「敏感期」ととらえ、この時期を正しく利用して子どもの成長につなげることを目指している。文字に対する「敏感期」=言語発達期とされるのが2歳から6歳ごろまでの時期だ。

「しののめモンテッソーリ子どもの家」の三井明子園長と赤塚美希子先生が特に絵本化を望んでいたのは「カタカナ」。子どもたちが文字を習得していく際、抜け落ちてしまいがちなのが「カタカナ」だからだ。

「ひらがな」は多くの家庭で最初に子どもに教える文字。小学校でも最初に習う。英語教育熱の高まりで幼いころから英語教室に通い、「ABC」を学ぶ子も少なくないだろう。しかし「カタカナ」は、日常生活で必要な文字なのに、どちらかというと後回しにされることが多く、「小学校でもあまり丁寧に教わらない」と嘆く保護者もいるという。

 将棋の藤井聡太七王位や英国ウィリアム王子の長男・ジョージ王子が、幼稚園で受けたことでも注目されたモンテッソーリ教育。「すなもじ」シリーズを実際に触ってみると、ざらざらした砂の感触がなんだかくすぐったくて、確かに子どもは喜びそう。楽しくてなぞっているうちに体が覚えてしまう、という感覚が、大人にはちょっとうらやましい。

(構成 生活・文化編集部 上原千穂)