わが子の聞き役に徹すると、むしろ子供をダメにする…賢い親が家でやっている「魔法の言葉あそび」
言葉の習得は親子の会話を通じて行われる。幼児期から小学生以上まで、会話が言語力の向上に重要である。
親子の会話を通じて、子供の言葉を抽象化・具体化する力を育てることが重要。口ぐせに「つまり?」「たとえば?」を取り入れ、子供にまとめさせる練習をする。
子供が自ら「つまり」と言い始めるようになるまで徐々に練習を重ねる。語句レベルでの言いかえ練習も有効であり、身近なモノを題材にして行うことがオススメ。
子どもは親子の会話を通じて言葉を習得すると言われている。どのような会話をすればいいのだろうか。横浜国語研究所代表取締役の福嶋隆史さんの書籍『塾へ行かなくても得点力がぐ~んと上がる!ふくしま式で身につく!国語読解力』(大和書房)より一部をお届けする――。
■「親子の会話」は一番手っ取り早いトレーニング
言葉というものは、もともと、「話すこと」を通して習得するものです。
幼児期がその最たる例です。幼児期の言語習得手段は、読み書きではありません。
どの子も、自分の最も身近にいて最も長時間関わっている人物――親――と話すことを通して、言葉というものを学びます。
話すことで学ぶのは幼児だけではありません。小学生以上の子も同様です。
たしかに、小学生にもなれば読み書きから学ぶことも増えていきますが、それでもやはり、会話から学ぶ量のほうが圧倒的に多いはずです。
論理的思考力習得の基礎段階においても、親子での会話(※)が一番手っ取り早いトレーニングになります(※特に意識的に一対一で行うものは「対話」と呼びます)。
■口ぐせにするべき言葉
さて、その対話型トレーニングのうち、「言いかえる力」(抽象化・具体化の力)を高めるために今すぐできる習慣があります。
それは、「つまり?」「たとえば?」を口ぐせにする、ということです。
「ねえお母さん、今日ね、アヤコがね、私のほうをずっと見てくんの、でね、何、って言ったらね、別に、とか言ってね、それでね、……」
たとえば、延々と続くこういった子どもからの訴えを、あなたはどう受け止めますか。
「ふーん」とうなずいている“だけ”では、子どもの国語力は育ちません。
いわゆるカウンセリング・マインドを発揮して、とにかく「聞き手に回る」という態度は、言語技術育成の観点では必ずしも好ましいものではありません。
■積極的にまとめてあげる
もちろん、子どもがひと呼吸するまでは聞いてあげましょう。でも、そのあと忘れずにこう言います。
「つまり、なんだかよく分からない理由で、アヤコとけんかになっちゃったってこと?」
こんなふうに、積極的にまとめてあげるのです。
最初のうちはこれを繰り返しますが、徐々に、その抽象化を子どもに任せていきます。まとめてあげるのではなく、「つまり、どういうこと?」と問うだけにし、自分でまとめさせるようにするわけです。
■要求されなくても言い始めるようになる
このように、いつも「つまり」をさりげなく要求していれば、そのうち、要求されなくても子どもみずから「つまりね、……」と言い始めるようになります。
ただし、今挙げた例は、比較的長い「文」の抽象化になっていますから、なかなかうまくいかない場合もあるかもしれません。
その場合は、語句レベルでの言いかえを対話で練習します。
目の前にあるモノを、何でも題材にすることができます。
「鉛筆、消しゴム、ノート。つまり何?」
「えーっと、文房具?」
「正解。じゃあ、たんす、いす、机。つまり何?」
「えーっと、家具?」
「そう。じゃあ、文房具、家具って、つまり何?」
「えーっと……あ、分かった! 道具?」
「正解!」
ここまで練られた問題にできなくとも、身近なところにいくらでも題材は転がっていますから、どんどん試してみてください。