「年収1000万円」でも生活が苦しい人がいると聞いたのですが、本当でしょうか? ぜいたくをしているのではないかと思ってしまいます…。

AI要約

年収1000万円は高収入とされるが、実際には家計が苦しい人もいる。

年収1000万円を超える割合は5.4%で、手取りは税金などで減るため、実際の支出額は少ない。

公的補助に制限が加わる、世帯状況や生活スタイルによって消費も異なることも家計を圧迫する要因となる。

「年収1000万円」でも生活が苦しい人がいると聞いたのですが、本当でしょうか? ぜいたくをしているのではないかと思ってしまいます…。

「年収1000万円」はいわゆる「高収入」の代名詞として使われることがあります。それだけの年収をもらっていれば、生活にゆとりがあると思われるかもしれませんが、実際は家計が苦しいと感じている人もいるようです。

本記事では、年収1000万円を超える人がどれくらいいるか、政府のデータをリサーチしました。また高収入でも「生活が苦しい」と感じている人がどのような状況にあるかも解説します。

令和4年分の「民間給与実態統計調査」によると、年収1000万円超をもらっている人の割合は表1の通りです。

※国税庁「令和4年分 民間給与実態統計調査」を基に筆者作成

給与所得者全体に対する年収1000万円超をもらっている人の割合は、5.4%でした。

このデータを見ると、「日本人で年収1000万円は5%」という話は的を射ているようです。

年収1000万円は、単純計算すると月収約83万円です。最終的な手取り額はもっと少なくなるとはいえ、これだけの年収があれば、生活にゆとりがあるように思えます。

しかし、金融広報中央委員会のデータによると、1000~1200万円未満の収入がある263人中、金融資産を保有していない世帯は「12.9%」いました。その中には、生活が苦しくて資産を保有する余裕がない人も含まれると思われます。

生活が苦しい理由として考えられる要素をいくつかご紹介します。

◆そもそも手取りはそれほどではない

年収1000万円の人の手取りは1000万円ではありません。税金や年金保険料、健康保険料、介護保険料、雇用保険料などがもろもろ引かれると、数百万円差し引かれてしまうことがあります。

「手取りは一般的に額面のおよそ75~85%」といわれることがあります。個々の状況は異なるため一概にはいえませんが、年収1000万円であれば手取り額はおよそ750~850万円台になるケースが多いかもしれません。

年収1000万円といっても、実際に使えるお金は1000万円ではなく、もっと少ないのです。

◆公的補助に制限がある

高年収の人は、受けられる公的補助に制限が加わるケースが少なくありません。例えば、配偶者控除は年収1000万円を超えると適用されなくなるといわれています。

また給与所得控除額は、控除額が目減りします。本制度では、収入が850万円までは段階的に控除額が計算されるのです。一例を挙げると、収入が850万円の人の控除額は195万円です。

一方850万円超の場合、一律で195万円までしか控除されず、収入に対する控除額割合は減っていきます。このように、高年収だと公的補助を制限されることがあり、多少なりとも家計にマイナスの影響があると考えられます。

◆世帯状況や生活スタイルによっては消費も多い

年収1000万と一口にいっても、5人世帯と単身世帯では意味が違います。仮に5人世帯(両親と子ども3人)の働き手が一人で、全員を養うとしたら、単身世帯よりも必要出費が高くなる可能性が高いでしょう。

また生活スタイルも影響します。都心部の賃貸に住んでいる場合と、実家から通っている場合では、住居にかかるお金は異なるでしょう。あるいは住宅ローンの有無など債務状況によっても、家計のやりくりは変わるといえます。

仮に、年収1000万円(手取り750万円)で支出700万円の世帯があるとしましょう。この世帯を、年収500万円(手取り375万円)で支出300万円の世帯と比べたとき、「年収1000万円ある方がゆとりがある」とはいい切れません。

年収1000万円は高収入の部類にあるといえるかもしれませんが、実際の手取りや公的補助の制限、また世帯支出などを考えた場合、必ずしもゆとりのある生活が保証されているわけではありません。

出典

国税庁 令和4年分 民間給与実態統計調査-調査結果報告-

金融広報中央委員会 家計の金融行動に関する世論調査[総世帯](令和3年以降)

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部

ファイナンシャルプランナー