「朝5時起き」で健康と幸せは手に入るのか? 記者が一週間試してみた

AI要約

起業家やセレブのあいだで「朝5時起き」の人気が高まりつつある。SNSでも超早起き生活をシェアする人が増えており、その効果について記者が実践し、専門家にも聞いた。

朝早く起きることの効果や成功者の朝のルーティン、その文化現象について解説されている。

記事の著者が実践した朝5時起きと生産性に関する実験について詳細が述べられている。

「朝5時起き」で健康と幸せは手に入るのか? 記者が一週間試してみた

起業家やセレブのあいだで「朝5時起き」の人気が高まりつつある。その影響を受けて、SNSでもこうした超早起き生活をシェアする人々が増えている。では、果たしてその効果はどれほどのものなのか? 記者が実践し、さらに専門家にも聞いてみた。

時刻は午前5時15分。私は自己満足にひたりつつ、近所の通りを歩いている。建物は夜明けの桃色の光を浴びている。「朝を制する者、一日を制す」と、生産性のグルであるティム・フェリスは提唱している。“賞品”は視界に入っている。一杯のオーツミルクラテ──馬鹿みたいに早起きした自分へのご褒美だ。電車はまだ動き出しておらず、沈黙のおかげで、これまで聞こえなかった音が大きく聴こえるようだ。カモメが摩訶不思議な叫びをあげている。

おそらく、とても早い時間に起きて出歩くことの一番辛い点は、「ロンドンは24時間眠らない街である」という嘘を暴いてしまうことだ。私が一晩中開いているものだと思っていた角の店は、落書きアートがスプレーされたシャッターの向こうにある。

空港行きのバスの停留所を通り過ぎる。そこには、ひと目でシフト労働者とわかる3人が、無人の道路をどんよりと見つめている。彼らは「一日をものにしてやろう」などという活気をほとばしらせてはいない。

私の気分は一気に下降しはじめる。通りがかったカフェは8軒続けて閉まっていて、コーヒーが飲めないのだ。それで、緑地に向かい瞑想することにする。道中、フードを被った男が私と歩調を合わせたことに気づく。私はびくつき、自宅に向かおうと決める。この男は私をつけているのだろうか? 私は振り返る。そうではなかった。私は睡眠不足でおかしくなっているのだ。

どうして私はこんなことをしているのか?「午前5時クラブ」のメンバーであるエリートの超人たちの仲間入りをしようと、「ものすごい早起き週間」に挑んでいるからだ。

リッチな人々や有名人のあいだで、朝型化の人気がどんどん高まっている。ジェニファー・ロペスやジェニファー・アニストン、カーダシアン一家から、「フェイスブック」社のマーク・ザッカーバーグ、「アップル」社のティム・クック、そして「ツイッター」創業者のジャック・ドーシーといったIT系男子まで、あらゆる人がこのクラブに名を連ねる。アナ・ウィンターとミシェル・オバマもそうだ。

グウィネス・パルトローは長年のメンバーで、自身のインスタグラムでは、朝5時に起きて30分間の舌みがきとアーユルヴェーダ式オイルうがいをし、それから落ち着いて20分の超越瞑想に入り、続けて友人でフィットネス指導者のトレイシー・アンダーソンが考案したダンスエクササイズをする様子を紹介している。

文化現象としての「超早朝スタート」はまず、ロビン・シャーマの本『午前5時クラブ』(未邦訳)や、『朝時間が自分に革命をおこす 人生を変えるモーニングメソッド』『パワーアワー』(未邦訳)といった作品に着想を得て、ソーシャルメディア上で爆発的に広がった。シャーマのキャッチフレーズ「朝を制して人生を豊かに」に刺激を受けて、自己満足な連中──おっと失礼、強い自制心を持つ人は、自身の素晴らしい「#午前5時クラブ」ルーティンをシェアしている(TikTok投稿数は1750万を数える)。

疑り深い人たちにとって、ここにはある程度の魔術的思考があるように見える。ほかの人たちが居眠りしているあいだにベッドを出るという、たった一つのことさえできれば、運動したりヘルシーな食事をしたり、目標を達成したりするための時間が持てるだろうというのだから。それでも、ターメリックラテやら感謝の日記やら太陽礼拝やらといった情報をスクロールしまくった私は、もう充分にそれを試してみようという気になっていた。

私は「生まれつきの早起き」と呼べる人間ではない。けれど、多くの人たちと同じように、私と時間の関係はパンデミック中に変化した。夜どこにも行く場所がなくなったので、夜更かしは無意味になった。私の起床時刻は次第に早くなっていった。写真家として、最高の光をとらえるために夜明けに起きることにも、ものすごく意義があった。

私は2021年1月までに、自分が住む街の近くにあるプリムローズ・ヒルの頂上に登り日の出の写真を撮るという「ロックダウン・プロジェクト」を始動していた。そのおかげで早起きの習慣は定着したが、早朝の散歩はちがった。私は普段、目覚ましをかけることなく午前6時半に目覚める。でも、この時刻の私は本調子ではない。

まずはインスタントコーヒーをがぶ飲みしたり、ネットで悲観的なニュースばかり読んだりして90分過ごすと、仕事の準備にかかる時間になる。午前5時に起き、計画的なルーティンに従えば、私は生産的で集中力のある人間になれるだろうか? 私は一週間、これに専念してみることにした。