脳がバグる荒物屋のような蕎麦屋。福井・坂井市にある謎の店『たけうち』が面白くてウマい

AI要約

福井県坂井市にある『手打ちそば処 たけうち』は、荒物屋と蕎麦屋が併設された風変わりなお店である。

店内は日用品から食事処へと変化し、ゲストは最初は混乱するが蕎麦屋としての評判は高い。

70歳の店主が始めたこのお店では、地元の蕎麦粉を使用し、福井県のそば文化を堪能することができる。

脳がバグる荒物屋のような蕎麦屋。福井・坂井市にある謎の店『たけうち』が面白くてウマい

 書店に併設されたブックカフェとか、レストランだけどオリジナルの可愛い雑貨も売ってるお店……なんてのはよく見かけます。しかし、ホウキやビニール手袋、蚊取り線香なんかが雑然と陳列された、いわゆる日用雑貨を扱う荒物屋的な個人商店の奥に併設された蕎麦屋なんてあまり聞きませんよね。

 それがあるんですよ、福井県坂井市の三国町に。その名も『手打ちそば処 たけうち』。店名だけ聞くと蕎麦屋感があります。手打ちそばって言ってるんですから当たり前です。そして店構えも蕎麦屋です。

 なのに店内に一歩足を踏み入れると、サランラップや入浴剤、紙コップやシャンプー、おろし金やフライパンなどが雑然と並ぶ荒物屋なのです。

 ここで、入店した人の脳は軽くバグることになります。

「えーと、買うものはなんだっけ? 蚊取り線香は去年のがまだあったよな。あ、ティッシュがもうなくなりそうだった。いや、そもそもオレ、何しにここに来たんだっけ……?」

 ブツブツ独り言を呟きつつ、夢遊病者のように店内を徘徊することになるのです。かなりアブない状態と言えるでしょう。

 ザ・家庭用日用品が収められた陳列棚を抜け、店の奥にズンズン入っていくと、その先に中に突然、テーブル席とカウンター席が見えてきます。とはいえ、脳はまだここが蕎麦屋だとは認識しません。

「あ、そうか。ここは商店でもあるが、自宅でもあるのだな。つまりこのテーブルがあるスペースは、この商店を経営するご家族が食事するダイニングなんだな。勝手に入ってマズいことしちゃったな」などと思うわけです。

 しかし、カウンターの椅子の数の多さや、壁に貼られたメニューなどを見ているうちに、ようやく「あ、オレ蕎麦屋に入ったんだった」と思い出すのです。荒物屋から食事処へ。脳がやっと順応してくれます。そして「お腹すいた!」と空腹を思い出すわけです。

 さて、ここまで風変わりなお店の構造ばかりをお伝えしてきましたが、この『たけうち』さん、2024年で10周年を迎える人気店。蕎麦屋としての評価もすこぶる高い名店です。

 店主・竹内浩三さんは御年70歳。この荒物屋を営みながら、趣味でそば打ちを始め、60歳の時に店内に蕎麦屋をオープンさせたそう。

「越前そば」が有名な福井県ですが、実は全国屈指の“そばどころ”としても知られています。福井では、地元の各エリアだけでとれる地の蕎麦=“在来種”の蕎麦粉を使うのが常識。品種改良されたメジャーなそば粉に比べ、個体差があって育てるのが難しい反面、複雑で奥行きのある旨味と香味を備えています。