ビタミンB12が不足すると「貧血」を起こすリスクがある【高齢者の正しいクスリとの付き合い方】

AI要約

巨赤芽球性貧血は胃全摘後に起こる可能性がある貧血で、ビタミンB12欠乏が原因である。

ビタミンB12の吸収には胃が重要であり、胃全摘後は内因子と胃酸が不足してビタミンB12が十分に吸収されなくなる。

ビタミンB12の補充は筋肉注射が必要であり、週に3回の投与が通常である。

ビタミンB12が不足すると「貧血」を起こすリスクがある【高齢者の正しいクスリとの付き合い方】

 前回は鉄欠乏性貧血についてお話ししました。今回はそれとは別の貧血「巨赤芽球性貧血」を取り上げます。

 高齢者の中には胃がんなどで胃全摘手術を受け、胃がないという方がいらっしゃるかもしれません。巨赤芽球性貧血は、特にそういった胃全摘後に起こる可能性がある貧血です。この貧血に関わるものがビタミンB12です。ビタミンB12は赤血球の成熟に必要なビタミンで、欠乏すると成熟障害が起こり貧血になってしまいます。

 ビタミンB12は食物中に多く含まれているため、極端な偏食などがなければ一般的に巨赤芽球性貧血は起こりません。ところが、胃全摘後ではビタミンB12欠乏から巨赤芽球性貧血になることがあるのです。

 ビタミンB12の吸収には胃が重要な役割を担っています。食物に含まれるビタミンB12はタンパク質とひっついていて、胃から分泌される胃酸の効果でタンパク質が分解されることでビタミンB12単独になります。これを遊離型のビタミンB12といいます。遊離型ビタミンB12は、これも胃から分泌される内因子とひっつくことで、小腸(回腸)から吸収されます。胃全摘により胃がなくなると、胃酸、内因子もなくなってしまうため、ビタミンB12が吸収されなくなってしまい、巨赤芽球性貧血になってしまうのです。

 そのような場合はビタミンB12を補充すればよいのですが、内服薬としてビタミンB12を補充しようとしても内因子がなければ結局は吸収することができないので、貧血を改善することはできません。そのため、注射薬での補充が必要となります。具体的には筋肉注射として投与します。

 ちなみに、胃全摘後の巨赤芽球性貧血はすぐには起こりません。ビタミンB12は体内に大量に備蓄されているため、人によりますが胃全摘後もおおよそ3~5年程度は欠乏することがないといわれています。これを超えるとビタミンB12が枯渇して巨赤芽球性貧血になる可能性があるため、筋肉注射でのビタミンB12の補充が必要になるケースがあるのです。補充は毎日しなければいけないというわけではなく、通常は週に3回で十分とされています。

 ビタミンB12欠乏による巨赤芽球性貧血は胃全摘後以外にも生じる場合があり、前述した極端な偏食も原因となります。ビタミンB12は動物性食品に多く含まれているため、菜食主義や過度なダイエットなどで欠乏のリスクがあるのです。

 胃全摘後ではある程度仕方ないところはありますが、そうでない場合には普段からバランスの良い食事を心がけることが重要になります。これは、巨赤芽球性貧血の予防だけでなくあらゆる点でいえることですね。