「ここまでヒットするとは」 ダイソー釣り具、価格破壊ルアーで続く快進撃 「釣れる確信」の背景

AI要約

100円ショップ大手のダイソーが釣り具ブランドとして注目を集めている。安価ながら品質の良さを追求し、釣り人から驚きの釣果報告が相次いでいる。

同社は200種類以上の釣り具を扱い、主力のルアーは100円~200円の価格設定に抑えられている。メタルジグやワーム、エギなど多様なアイテムを提供。

コロナ禍の釣りブームを受け、ダイソーの釣り具は爆発的な売上を記録。新商品の開発や既存商品の改良に注力し、成長を続けている。

「ここまでヒットするとは」 ダイソー釣り具、価格破壊ルアーで続く快進撃 「釣れる確信」の背景

 釣り愛好家の中で注目を集めている、異業種の“釣り具ブランド”がある。1個100円~200円の価格破壊を巻き起こしているルアー。仕掛け人は、100円ショップ大手『ダイソー』(株式会社大創産業)だ。SNSでは「ダイソールアーで釣れるとは思わんかった」など、試してみた釣り人がびっくりの釣果報告が続々。新型コロナウイルス禍によって訪れたアウトドアブーム、SNSの口コミの追い風を受け、「右肩上がり」で拡大を続けている。開発・販売を担当する同社のバイヤーに、“売れる秘密”を聞いた。(取材・文=吉原知也)

「釣り具だけでなく全商品において、価格だけでなく品質の良さも訴求したいという強い思いがあります。この安さで買えて、専門店の他社に負けないクオリティーを追い求めていきたいです」

 釣り具分野を担当する若手バイヤーの中村豪志さんは、ダイソールアーにかける並々ならぬ情熱についてこう語る。

 同社は、市場規模の大きい「海釣り」向けをメインに約200種類の釣り具を扱い、その半分ほどを占めるルアーは主力となっている。

 ルアーとひと口に言っても、対象とする魚によってタイプや種類が細分化されている。青物、タチウオやヒラメなどを狙う、金属でできたメタルジグを筆頭に、細長い虫の形をしたワーム、ワームと組み合わせる金属製のジグヘッド、タコやイカを専門とする和製ルアーのエギ。一般的に600円~2000円前後の値段が多いルアーだが、同社は100円~200円(税抜き)の価格設定に抑えている。

 他にも、アジ・イワシを狙うサビキといった仕掛け、針・重りも豊富にそろえており、釣り具のケースやバケツ、竿(ロッド)にリールもラインアップに。あらゆる釣り具に手を出しているという印象だ。

 もともと釣り具を取り扱っていた同社が本格的に業界に知れわたったのは2021年から。コロナ禍の釣りブームも相まって、キャンプ用品と共に、爆発的な売上をマーク。記録的な成長を続け、今年も堅調に推移しているという。

 これまでは「中級者」をターゲットの中心に置いていたが、初心者や子どもといった「ライト層」にも訴求しようと、さらなる開発に従事。メーカーと二人三脚で企画やアイデアを振り絞り、一番大事な“値段を抑える”企業努力を重ねている。「手に取ってもらいやすい」パッケージのデザインなど、研究成果とこだわりを詰め込んでいるという。

 特に、今年に入ってから打ち出した商品が次々ヒット。当時の担当バイヤーの脇坂健太さんは「ここまでヒットするとは思わなかったです」と驚きを口にする。

 5月下旬に、釣った魚やエサを生かしておくためのエアーポンプを投入。700円(同)とダイソー商品にしては“高級”だが、あったらうれしい道具だけに、初心者にもウケた。6月には、堤防のテトラポッドの間に生息するカサゴなどの根魚を狙う「穴釣り」に特化したミニロッドを新開発。「一瞬で売れました」という。

 この穴釣りは、玄人向けのマイナーな釣り方とも言える。そんな“新ジャンル”の開拓にも余念がない。脇坂さんは「穴釣りはウチがはやらせる! という思いで取り組みました。これから盛り上げていけるようにしたいです」と胸を張る。

 さらに、業界で革新的なチャレンジを今年3月に敢行。メタルジグに通常セットで付いている針を外したのだ。ルアー本体だけの新商品。「昨今の物価高の影響もありますが、中級者・上級者の方々は、針を組み合わせるなど自ら釣り具をカスタムする方が多いです。検討の結果、針を外そうと。その代わりに、リアルプリントという技術で、小魚に見えるよう精緻に再現する特殊な塗装を施しています。針をなくした分、そこにお金をかけています。もちろん、『釣れる』という確信があります」と、中村さんは自信を込める。

 こうした新発想を続ける背景には、こんな理由がある。「釣りブームと言っても、正直なところ一度落ち着いている状況でもあります。それに、どんなヒット商品でも、ピークが来れば、必ず落ちる時期が来ます。だからこそ、次の商品を当てにいかないと、右肩上がりを持続することはできません」(脇坂さん)。

 100円ショップのライバル他社が続々と参入し、もともと専門店が大きな存在感を示すフィッシング業界だけに、競争は激化するばかり。プレッシャーにさらされながらも、次の一手を探し続けている。