6代目となる新型ホンダCR-Vが登場 パワートレインはプラグイン・ハイブリッド機能を持つ燃料電池

AI要約

ホンダが2024年7月19日に発売した新しい燃料電池車「CR-V e:FCEV」は、外部から充電可能なプラグイン機能を備えることが大きな特徴で、航続距離や充填時間といったFCEVのメリットをさらに向上させている。

CR-V e:FCEVは、一充填走行距離は約621kmで、バッテリーのみで走行可能な距離は約61kmを実現。特にバッテリーEVとしての利用が可能である。

ユーザーの使い勝手や充電便益を考慮し、さまざまな機能が充実しており、バッテリーの充電時間を調整したり、水素ステーションの検索機能や充電の利便性を最大化している。

6代目となる新型ホンダCR-Vが登場 パワートレインはプラグイン・ハイブリッド機能を持つ燃料電池

ホンダが「クラリティ」に続く、新しい燃料電池車(FCEV)となる「CR-V e:FCEV」を2024年7月19日に発売した。

◆プラグイン機能を備える

CR-V e:FCEVは、外部から充電可能なプラグイン機能を持つのが大きな特徴。航続距離の長さや水素の充填時間の短さといったFCEVのメリットはそのままに、充電機能を加えることで利便性をさらに向上させている。

◆一充填走行距離は約621km

CR-V e:FCEVの一充填走行距離(水素満充填、バッテリー満充電時)は約621km、一充電走行可能距離(バッテリーのみ)は約61km(WLTCモード走行パターンによるホンダ測定値)を実現。日常の買い物や短距離の通勤程度であれば電気自動車=バッテリーEV(BEV)としてまかなえることになる。

車体は新規に興したものではなく、日本への導入は見送られた6代目の新型CR-Vをベースにしている。使い勝手の高さやパッケージなどSUVならではの魅力を兼ね備える。

◆補機類の合理化と低消費電力化

ホンダは、以前から燃料電池車に注力してきた歴史がある。CR-V e:FCEVでは、性能を左右する要となる燃料電池(FC)スタックが刷新されたのをはじめ、補機類の合理化や低消費電力化を徹底。

さらに、新構造のセルユニットの採用や生産性の向上などにより、「クラリティ・フューエル・セル」に搭載されていた従来のシステムに対し、コストを3分の1までに削減した。また、耐食材料の適用や劣化抑制制御により、耐久性を2倍に向上させたほか、耐低温性も大幅に向上。最新のFCシステムは、ホンダとGMが共同開発したもので、両社の合弁会社であるFuel Cell System Manufacturing(米国ミシガン州)で製造される。

◆約2.5時間で満充電

また、充電機能は、フロント・フェンダーに設置されたAC充給電コネクターは、日本と米国の普通充電規格である「SAE J1772」を採用。普通充電は6.4kWに対応し、約2.5時間で満充電が可能(EV航続可能距離の表示がゼロになった時点から、満充電までのおおよその時間)。また、AC200V電源に加え、AC100V電源での充電にも対応している。

さらに、普通充電口に差し込んでAC100V電力が取り出せるAC車外給電用コネクター「Honda Power Supply Connector(パワー・サプライ・コネクター)」も標準装備されている。1500Wまでの消費電力に対応し、アウトドアなどのレジャーや災害時や停電時の電源として活用できる。また、ラゲッジ内に設置されたCHAdeMO(チャデモ)方式のDC給電コネクターに「Power Exporter e:6000(パワー・エクスポーター・イー6000)」、「Power Exporter 9000(パワー・エクスポーター・9000)」などの可搬型外部給電機を接続することで、最大で一般家庭の約4日分の電力を供給することも可能。災害時の非常用電源として、排気ガスを出さずに自宅や避難所、屋内のイベントなどにも活用できる。給電機能も大きな魅力だ。

◆コンパクトなメカニズム

ユーザーとして気になるのは、先述したパッケージングへの影響だろう。SUVならではのゆとりのある空間を確保するため、FCシステムとプラグイン機能の2つの主要メカニズムを搭載するスペース効率を徹底的に追求された。さらに、その上で使い勝手のよさや安心感を得られる工夫が盛り込まれている。

具体的には、FCスタックを核とするFCシステムをはじめ、モーターやギヤボックス、「PCU(パワー・コントロール・ユニット)」が一体化された駆動ユニットが組み合わされ、フロント・フード下に集中配置されたことで居住空間への影響を最小化に抑えた。さらに、荷室部分に設置された水素タンクを棚状の平らな面で覆い、この上面から荷室の後端まで収納スペースを広げることができるフレキシブル・ボードを設定。これにより、荷室を上下2段に分けて使用できる。

◆エネルギーの使い方を選択

FCEVとしてのエネルギーマネジメント機能も備えている。水素による発電電力、充電バッテリーからの電力を組み合わせ有効に活用する「エネルギーマネジメントモード」を用意。日常走行ではバッテリーに蓄えた電気のみでEV走行、休日などにはFCが発電する電力も合わせてロングドライブなど、使い方や運転状況に合わせてエネルギーの使い方を選択できる。さらに、センターコンソールに設置されたeボタンで「AUTO」、「EV」、「SAVE」、「CHARGE」の各モードが選択可能。スマートフォン感覚でナビやオーディオなどの操作を快適に行える「Honda CONNECTディスプレー」に、FCEVならではの機能も追加された。

加えて、水素ステーションの稼働状況がリアルタイムで分かる「水素ステーション検索機能」、充電に使用する電流量を調節することで、合計電力量を契約アンペア以下に抑制する「充電電流設定」、あらかじめ設定した水素残量になると自動で給電を停止し、車外給電などでの水素の使い過ぎを防ぐ「給電下限水素残量設定」など、充電や外部給電の利便性を最大限に引き出す便利機能も用意されていて、充電できるFCEVの利点を最大限享受できる。

◆バッテリーの充電時間を調整

さらに、ホンダ独自のコネクテッドサービス「Honda Total Care プレミアム」に加入することで、実用性を高めることができる。ユーザーの使い勝手に合わせて、充電量の上限を80%~100%の間で5%刻みに設定可能な「最大充電量設定」の利用が可能。バッテリーの負担を抑え、バッテリー性能の劣化抑制に寄与。

「充電待機時間設定」は、バッテリーの充電時間帯を曜日単位で設定できる。これにより、充電ケーブルをクルマにつないでいても指定の時間までは待機状態となり、電気代の高い時間帯を避けた充電設定が可能になる。また、「お出かけ前タイマー設定」も用意。充電器をつないだ状態でクルマを使用する時間をタイマー設定することで、設定時間に合わせて車内を快適な温度にして、バッテリーも満充電の状態で出発が可能だ。バッテリーの温度もエアコン設定に連動して調整されるため、バッテリー温度による航続距離への影響を最小限に抑制できる。

◆スムーズでトルクキーな走り

FCEVの走りは、スムーズで高い静粛性が期待される。CR-V e:FCEVもモーター駆動によるFCEVならではのスムーズでトルクキーな走りが追求されたという。重量物である水素タンク2本と大容量バッテリーを含む「IPU(インテリジェント・パワー・ユニット)」を可能な限り低く、しかも車両中心近くに搭載する低重心のレイアウトにより、重厚で上質な乗り味とリニアなハンドリングが追求された。

サスペンションには、入力に応じて減衰力を変化させ、操縦安定性と乗り心地を高い次元で両立する振幅感応型ダンパーを採用。細かな振動を吸収して快適な乗り心地を確保しつつ、コーナリングでは、進入から立ち上がりまでコントロールしやすい優れた接地性を発揮するとしている。

◆世界トップレベルの衝突安全性能

そのほか、最新の衝突安全性能や予防安全性能を備えている。グローバルで販売されているCR-Vは、世界トップレベルの衝突安全性能を目指して進化を遂げている。その骨格をベースに、燃料電池システムや水素タンクなどの搭載構造を新開発し、車両重量の増加にも対応。優れた乗員保護性能に加え、水素や高圧電気に対する安全性も高い水準で確保するという。

予防安全性能では、先進の安全運転支援システム「Honda SENSING(ホンダ・センシング)」を全タイプに標準装備。また、渋滞追従機能付アダプティブクルーズコントロール(ACC)には加減速や電動パワーステアリング設定など、FCEVの特性に合わせた制御の最適化が盛り込まれている。

CR-V e:FCEVの駆動方式は前輪駆動で、乗車定員は5名。ボディ・カラーは「プラチナホワイト・パール」、「メテオロイドグレー・メタリック」の2色設定。

価格は809万4900円。なおリース専用となっている。

文=塚田勝弘

(ENGINE WEBオリジナル)