大型トラックのEV普及にはバッテリーがキモ! 期待が寄せられる「全固体電池」の実現度

AI要約

ガソリン車やディーゼル車に積まれているバッテリーは鉛蓄電池、一方、電動自動車やハイブリッド車にはリチウムイオン電池が搭載される。電池の性能や安全性、そして次世代の全固体電池の開発が自動車業界で焦点となっている。

リチウムイオン電池は充電に時間がかかり、航続距離にも限界がある。全固体電池の開発により、急速充電が可能になり、航続距離も大幅に延長される見込みである。

日産自動車やトヨタ自動車など、自動車メーカーは2027年から2028年にかけて、次世代電池の実用化や全固体電池の市場投入を予定しており、EVの性能向上が期待されている。

大型トラックのEV普及にはバッテリーがキモ! 期待が寄せられる「全固体電池」の実現度

 ガソリン車やディーゼル車に積まれているバッテリーは鉛蓄電池である。これに対して、電動自動車(EV)やハイブリッド車にはリチウムイオン電池が搭載(始動用に別途鉛蓄電池も搭載)されている。なぜなら、電気モーターを動かして1トン以上ある車両を高速で走らせなければならず、それには大量のエネルギーを必要とするからだ。すなわち、それらには高出力・高性能なバッテリーが必要不可欠だということである。

 このリチウムイオン電池の構造は正極・負極・電解質で構成されているが、粗形材にはさまざまな素材が使用されていて、それらによって性能差が発生している。EVに搭載されているものもまちまちなのだが、一般に急速で80%程度充電するためには、30~40分程度の時間が必要になる。また、フル充電走行できる距離(一充電当たりの航続距離)は、乗用車タイプでは200~600km程度とされているものが多い。

 リチウムイオン電池の性能は開発された当初に比べて飛躍的に進化しているものの、乗用車でも前述の性能がやっとといった状態だ。製造コストがかかることもネックで、それがEVの車両本体価格を大幅に押し上げている。加えて、充電設備がまだ十分ではない。こういったことが普及を妨げている要因となっているのだ。

 まして、トラックやバスは車重があって長距離走行をすることが多い。輸送効率を考えれば、バッテリーは小型軽量・安価・高性能と、三拍子が揃ったものでなければならないのだ。

 また、リチウムイオン電池は安全性に関しても懸念が払拭されていない。外側のパッケージが密閉されているのでわかりにくいが、電解質には液体が使用されている。劣化や過充電が起きた場合、破裂や火災の危険性があるのだ。携帯電話ではそういった事例があり、航空機では預入荷物のなかには入れられないという制限がある。

 このような現状から、自動車業界では次世代を担う電池の開発が急がれている。それが、全固体電池だ。これは、その名のとおり電解質が個体によって形成されている電池であり、従来のリチウムイオン電池に比べて、

・劣化しにくいので長寿命

・温度変化が少ないので安全かつ短時間で急速充電ができる

・電解液の漏れ・発火・破裂がない

・個体なので曲げたり伸ばしたりでき、設計の自由度が高い

 などといったメリットがあるのだ。

 全固体電池の開発の歴史は意外に古く、1830年頃から試行錯誤が続けられてきたという。2000年に入ってEVの開発が進んだことから、全固体電池の開発にも拍車がかかった。2010年以降は、用途の限定されたサンプルなどがいくつか発表されており、いままさに量産・実用化に向けた機運が高まってきているといえよう。

 このようななか、日産自動車が新経営計画として、2027年には現在よりコストを30%抑えたEVを投入し、2028年には全固体電池を含む次世代電池の実用化を行うと発表した。トヨタ自動車は出光興産と提携し、全固体電池の量産技術開発・生産性の向上・販売網構築に向けて協業を開始した。これにより、2027~2028年ごろに、全固体電池の市場投入を行うとのことである。

 これらが実現すれば、急速充電が10分程度に短縮されて、一充電当たりの航続距離は1000kmを超えるという。この性能なら、大型トラックやバスでも、EV化が一気に進むことは間違いない。地球環境のためにも、全固体電池の開発には大いに期待が寄せられているのである。