SNS不適切投稿で罷免された元判事が審査請求書を最高裁に提出 「退職金不支給処分」の取り消し求める

AI要約

SNS上の私的な投稿内容を理由に訴追され、4月に国会の裁判官弾劾裁判所から罷免の判決を言い渡された元仙台高裁判事の岡口基一氏が、罷免による退職金不支給処分の取り消しを求める審査請求書を最高裁に提出。

弾劾裁判は1947年の制度創設来10回行われ、罷免とされたのは岡口氏で8人目。岡口氏は退職金不支給処分を違法と主張している。

岡口氏に対する罷免判決について、裁判官や弁護士などの専門家は判決を妥当でないとする意見が多数であり、裁判官の萎縮を招く可能性も指摘されている。

SNS不適切投稿で罷免された元判事が審査請求書を最高裁に提出 「退職金不支給処分」の取り消し求める

 SNS上の私的な投稿内容を理由に訴追され、4月に国会の裁判官弾劾裁判所から罷免の判決を言い渡された元仙台高裁判事の岡口基一氏(58)が19日までに、罷免による自身の退職金不支給処分の取り消しを求める審査請求書を最高裁に提出した。

 弾劾裁判は1947年の制度創設来10回行われ、罷免とされたのは岡口氏で8人目。判決は即日確定し、裁判官としての地位を喪失。弁護士や検察官になる法曹資格も失った上、最高裁判所長官による退職金不支給処分により退職金も不支給となった。

 最高裁は、岡口氏に退職金を支給しない理由を記載した「退職手当支給制限処分書」において、「国家公務員退職手当法施行令第17条で定める事情に関し勘案した内容についての説明」の欄を設け、「当該退職をした者は、裁判官弾劾裁判所から、次の行為につき裁判官弾劾法第2条2項を適用して罷免する旨の判決を受けたものである」として、弾劾裁判所が罷免の対象とした行為を記載している。

■「弁護士ドットコム」の緊急アンケートでは罷免判決について「妥当ではない」が77.9%

 しかし、岡口氏は9日付で提出した審査請求書で、「退職手当支給制限処分書」は「弾劾裁判所の判決の対象となった行為が記載されているのみであり、最高裁判所長官が、同行為をどのように評価し、また、国家公務員退職手当法12条1項柱書に列挙された諸事情をどのように勘案して、その結果、いかなる理由で、退職手当の全部を不支給としたのかが何ら記載されていない」などと主張。

「処分は、理由不備の違法があるが、それと共に、非違の内容及び程度が、退職手当の全部を不支給とするに足りるものとは到底認められないものであるから、実体上も違法であるというべきである」「退職金が支給されないという法的権利又は利益を侵害されている」と訴えている。

 岡口氏があらためてこう言う。

「一連の事実関係については、弾劾裁判所において、こちらの主張がほぼそのまま認められており、マスコミなどで報道されていたものとは全く異なっているが、その事実関係によると、退職金の全額不支給は到底導き出せない」

 岡口氏に対する罷免判決を巡っては、「弁護士ドットコム」が会員弁護士に対して緊急アンケートを実施した結果(673人から回答)、判決について「妥当ではない」が77.9%(524人)に上り、68.4%(460人)が「裁判官が萎縮すると思う」と回答している。

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