子供の外遊びに注意! 猛暑は目にもダメージ、将来の白内障リスクが高くなる

AI要約

高温や紫外線が目に与える影響について研究を行う金沢医科大学眼科学講座の佐々木洋主任教授による調査結果を紹介。熱中症と白内障の関係、紫外線と核白内障のリスクなどが明らかになっている。

熱中症歴がある人は白内障発症率が最大4倍に上昇することが判明。特に高温や高湿度の地域では白内障のリスクが高まることが示されている。

紫外線も核白内障のリスクと相関関係があり、過去からの眼部紫外線被ばく量が高い人は将来的に白内障のリスクが高まる可能性がある。適切な紫外線対策が重要である。

子供の外遊びに注意! 猛暑は目にもダメージ、将来の白内障リスクが高くなる

 今の季節、「目」にも注意を! 高温や紫外線が目に与える影響について研究を行う金沢医科大学眼科学講座の佐々木洋主任教授に話を聞いた。

■熱中症と白内障の関係も研究で明らかに

 熱中症になったことがある人は白内障発症率が最大4倍--。佐々木教授の調査で判明した。

 佐々木教授は日本システム技術メディカルデータベースを利用し、2016年から23年の5年間、追跡可能だった約260万人の診療データを「熱中症発症歴あり」「なし」に分類。それぞれの白内障発症率を比較したところ、冒頭の結果が出たのだ。

 60代では、熱中症歴なしの白内障が占める割合は5.3%だったが、熱中症歴ありでは22%だった。

「高温にさらされ、体温調節がうまくいかずに体内に熱がこもった状態になると、短時間で一気に体温が上昇します。熱中症患者では体内の深部温度が38~43度まで上昇し、それに伴い、水晶体温度も39度以上に上昇。タンパク質の変性が起こって、白内障リスクが増すと考えられます」

 白内障はカメラのレンズのような働きをする目の水晶体が濁り、視力が低下する病気だ。

「高温に高湿度が加わると熱がこもって水晶体温度が上がりやすい。さらに高齢になると体温調整の機能が衰えるので、やはり水晶体温度が上がりやすい。湿度が高い熱帯地域で育った人は温帯育成者より水晶体温度がもともと0.2度高く、太陽光を浴びると0.5度上昇し、高齢者では成人より0.3度高い」

 中高年に多い白内障は5つの型に分類でき、高温でリスクが上がるのは、5型のうち核白内障という型になる。

 佐々木教授は、中国の三亜、シンガポール、台湾の台中、中国の太原、石川県門前町で、50代から60代の10年間での核白内障の発症率を比較。すると三亜41.6%、シンガポール29.1%、台中10.2%、太原4.9%、門前町0.6%と、高温・高湿度の地域ほど白内障発症率が高かった。

■原因は紫外線 比較試験では約9倍

 さらに水晶体の熱負荷閾値を37度と仮定し、それより高い温度差分の1年間の累積量を地域ごとに算出した(累積熱負荷)。

「累積熱負荷を10年間の核白内障発症率と比較したところ、累積熱負荷が高い順(三亜→シンガポール→台中→太原→門前町)に発症率が高く、累積熱負荷と発症率は高い相関関係にあった。これによって、37度を超えた分の水晶体温度の時間の時間積分が核白内障に関係している可能性が高いことが示されました」

 紫外線も、核白内障のリスクと相関関係にある。佐々木教授は、三亜、台中、太原で生涯眼部紫外線被ばく量を算出。そして石川県門前町の70代と同等の被ばく量を1とし、2倍、3倍、4倍に分類。生涯眼部紫外線被ばく量が2倍になると核白内障発症率が1.9倍、3倍だと7.98倍、4倍だと11.88倍となった。

 親が気をつけたいのは子供の紫外線暴露だ。

「子供の頃からたくさん紫外線を浴びていた人は、成人後の核白内障発症率が高いのです」

 沖縄県・西表島在住の40歳以上の核白内障発症率を「子供の頃から沖縄に住んでいた(子供の頃から紫外線をたくさん浴びていた)」と「移住組」で比較すると、前者は8.67倍発症率が高いとの結果が出た。

 目のためにも熱中症&紫外線対策は必須だ。水分補給、そして日傘、帽子、紫外線カットの眼鏡・サングラスの活用を今日から徹底したい。

「お子さんも眼鏡やサングラスを。屋外スポーツをしているお子さんならUVカットのコンタクトが一番いい。太陽光を浴びて遊ぶと子供の近視の進行が遅くなるという報告がある一方で、将来的には早期に白内障を発症するリスクがある。屋外での活動時は紫外線対策を講じてください」

 白内障は、現時点では水晶体を人工の眼内レンズに替える手術しか根本治療はなく、放置すると視力が低下する。佐々木教授によれば、眼科医ですら高温や紫外線が目に及ぼす影響について知識が乏しく、十分な啓発がなされていないとのことだ。