「コンビニの募金箱」にお金を入れると健康になる…「情けは人のためならず」が科学的にも妥当である理由
他人のためにお金を使うと幸福感が高まることが研究で明らかになっている。お金の使い方によって自身の幸福度が向上することが示されており、少額でも他人のために寄付することでポジティブな感情が湧いてくる。
ポジティブな感情は長生きにもつながることが研究で示唆されている。楽観的な気持ちや幸福感を保つことが健康に良い影響を与え、長い人生を送る秘訣の一つとなっている。
他人に親切にして、喜びを感じることが重要であり、それが自己の幸福と健康につながることが科学的に裏付けられている。
幸せに長生きするには何が必要なのか。心理学者の内藤誼人さんは「他人のためにお金を使えば使うほど幸福度が高まることがわかっている。たとえばコンビニのレジ横の募金箱に小銭を入れるだけでも効果はある」という――。
※本稿は、内藤誼人『すぐに実践したくなる すごく使える社会心理学テクニック』(日本実業出版社)の一部を再編集したものです。
■人のためにお金を使うほど幸福感が高まる
私たちは、だれでも自分のことが一番かわいいものです。自分にお金を使うのはまったく惜しくはありませんが、他の人のためにはびた一文でも使いたくない、というのが人情ではないかと思われます。
けれども、本当は自分にではなく、他の人にお金を使うべきなのです。
なぜかというと、他の人にお金を使うと、自分がハッピーな気分になれるから。他の人に親切にすると、至福の気分を味わうことができるのです。こんなにうれしいことはありません。
カナダにあるブリティッシュ・コロンビア大学のララ・アクニンは、136か国のデータから、他の人のためにたくさんお金を使う人ほど、幸福感が高まることを明らかにしています。
文化が違っても、経済状況が違っても、他の人にお金を使うと幸せな気分になるという傾向は世界中の国で確認できました。
貧しい国では、日々の食料を得ることさえ困難です。
けれども、そういう貧しい国でさえ、自分にではなく、他の人のためにお金を使うと、幸福感は高くなるのです。この法則に、例外はありません。どの国の、どの国民も、人のために親切にすると幸せになれるのです。
■コンビニのレジ横の募金箱に小銭を入れるだけでいい
もうひとつ研究をご紹介します。
カナダにあるサイモン・フレーザー大学のキャサリン・ハンニバルは、50名の元犯罪者に、自分にではなく、他人のためにお金を使ったときのことを思い出してもらいました。すると、元犯罪者もポジティブな感情が高まったのです。
さらにハンニバルは、64名の非行少年と、777名の元犯罪者に、貧しい子どものためにお金を使ってもらったのですが、やはりポジティブな感情が高まることを確認しています。思いやりなどなさそうな犯罪者でも、他人にお金を使うのは気持ちがいいことなのでしょう。
「最近、あまり幸せな気分を感じることがない」という人は、ぜひ他の人のためにお金を使ってみてください。
お金の多寡は関係ありません。わずかなお金でもかまわないのです。
豪勢なディナーをおごってあげなくともよいのです。ごく普通の居酒屋で食事をし、ワリカンにするときにほんの少し多めに払うだけでもよいでしょう。
コンビニやスーパーには、レジの横に募金箱が置かれていることがありますよね。
そういう募金箱を見つけたら、1円でも10円でも入れましょう。ほんの少しでも困っている人の援助ができたということで、幸せな気分になれます。
「情けは人の為ならず」という言葉がありますが、まさしくその通りで、人に親切にすることは、自分自身が幸せを感じるための方法です。
ケチケチせず、どんどん他の人のためによいことをしてください。
■いつでもポジティブな人ほど長生きできる
他の人のためにお金を使うと、だれでも気持ちがよくなります。うれしさや高揚感、幸福感などのポジティブな感情が高まるのです。
恩恵はそれだけではありません。
なんとポジティブ感情は、長生きをすることにもつながるのです。
オランダにあるティルブルフ大学のペトラ・フーンは、1018名の慢性冠症候群(以前は安定冠動脈疾患と呼ばれていました)の外来患者を10年間追跡調査してみました。
この10年間の調査期間中に、369名(36%)が亡くなりました。
けれども10項目のポジティブ感情テストで、標準偏差が8.8点高くなるごとに、すべての死因リスクが16%ずつ減ることがわかりました。亡くなる人の多くは、ポジティブ感情テストであまり得点が高くない人たちだったのです。
普段から、陽気に明るく、ポジティブな気持ちで生活するようにすれば、それだけ長生きできるのです。