劇症型溶連菌で妊産婦5人死亡…日本産婦人科医会「マスク着用や手洗いなど感染予防を」

AI要約

劇症型溶血性レンサ球菌感染症が急激に重症化し、妊産婦に影響を与えていることが明らかになった。

感染例が鼻やのどから多く、妊産婦の場合は早産や死産といった悪影響が出やすいため、感染予防が重要だ。

国内の感染者数は増加中で、感染が疑われる場合は早急な対応が必要とされている。

 急激に重症化し、致死率が高い「劇症型溶血性レンサ球菌感染症」で、2023年7月~今年3月に妊産婦5人が亡くなっていたことが、日本産婦人科医会の調査で明らかになった。「鼻やのど」からの感染例が多いとして、マスク着用などの対策を呼びかけている。

 同医会がまとめている妊産婦の死亡症例を、聖マリアンナ医大・長谷川潤一教授(同医会常務理事)らのチームが検証した。10~19年に劇症型で19人が死亡していたが、新型コロナウイルス禍と重なる20年1月~23年6月はゼロだった。

 溶血性レンサ球菌(溶連菌)はありふれた細菌で、感染すると発熱やだるさ、のどの痛みといった風邪のような症状が出るが、ごくまれに重症化する。妊婦が感染して急激に悪化すると、腹痛や血圧低下、出血などを起こし、早産、死産となることが多い。

 妊婦以外では、手足の傷から感染して重症化するケースが報告されていた。今回の調査では、鼻やのどからの感染例が目立った。

 長谷川教授は、「劇症型はまれなので必要以上に怖がらなくてよいが、マスク着用や手洗いなど感染予防をしてほしい。子どもなどの家族に感染者がいたら、受診時に医師に伝えるとよい」と話している。妊婦の感染が疑われる場合は、抗菌薬の早期使用、適切な医療機関への搬送などの対応が必要だとしている。

 国立感染症研究所によると、劇症型溶血性レンサ球菌感染症の今年の国内患者は、6月30日までに1144人に上った。これまでに最多だった昨年の941人(速報値)を既に上回っている。