ElevationSpace、大気圏再突入カプセルを高空落下試験–技術的な課題を確認

AI要約

ElevationSpace(仙台市青葉区)は9月18日、大気圏再突入カプセルの高空落下試験を実施。試験では、一部の機能に課題があるものの、技術検証を進める方針。

宇宙環境利用回収プラットフォーム「ELS-R」の初号機「あおば」は2030年以降のISS後の運用を見据え、地球に帰還するサービスを提供する。

ELS-Rは高度な技術が必要で、回収カプセルの再突入や回収は難易度が高く、世界的にも成功例がほとんどない。

ElevationSpace、大気圏再突入カプセルを高空落下試験–技術的な課題を確認

ElevationSpace(仙台市青葉区)は9月18日、大気圏再突入カプセルの高空落下試験を実施したことを発表した。福島県南相馬市沖で9月12~13日に実施した。

 開発を進める宇宙環境利用回収プラットフォーム「ELS-R」の初号機「あおば」の回収カプセルを想定している。

 試験は、大気圏再突入カプセルの回収プロセスを確認するための試験技術を構築して(1)降下中のパラシュートを放出し、パラシュートで減速、(2)カプセルの飛行中や着水時の飛行環境データを取得、(3)着水後のフローテーションバッグなど洋上回収に必要な装備が機能しカプセルを回収――という3つが正常に動作することを確認するのが目的。試験では、(1)は達成できなかったが、(2)の一部と(3)では正常に動作することを確認できたとしている。

 今回の試験からカプセルの一部が期待通りに機能しないなどの技術的課題が発生。今後は原因を究明して、課題を修正して、次回の試験ですべての技術検証を完了させる方針。

 ELS-Rは、運用が終了する国際宇宙ステーション(ISS)の2030年以後を見据えて、顧客企業から預かった貨物(ペイロード)を搭載して打ち上げ。地球低軌道(LEO)上でオペレーション実施後、大気圏を燃え尽きずに通過して、回収カプセルが地球に帰還し、最終的にペイロードを顧客企業に返却するというサービスになる。

 ELS-Rでは、ペイロードを搭載して宇宙空間で実証、実験して地球に帰還するという通常の人工衛星にはない機能を搭載するため、一般的な衛星開発とは異なる技術が多数必要になると説明する。

 回収カプセルもまた世界的に前例が少ない、非常に難しい技術と説明。大気圏への再突入では、数千度という高温に晒され、大抵の物体は燃え尽きる。ELS-Rの回収カプセルは燃え尽きずに、ペイロードを損傷させずに地上で回収する。こうした技術は難易度が高いという。大気圏の再突入と回収に成功している民間企業は世界的にもほとんどないとしている。

 同社の説明によると、再突入・回収技術を持っている国は米ロ中日の4カ国しかないという。小型衛星の制御、再突入、回収を行っている国は日本のみとしている。あおばの打ち上げは2026年以降を予定している。

 ElevationSpaceは、今回の試験を実施した福島ロボットテストフィールドが所在する南相馬市と、2023年4月に連携協定を締結。協定項目でもある「開発促進に向けた市内の実証場所確保」として今回の試験のほか、ELS-Rの開発にあたって必要となる海上での実証試験についても調整を進めている。

 南相馬市をはじめとする浜通り地域には、製造業を中心とした宇宙産業と親和性の高い企業が多数あり、こうした地元企業とものづくり面で連携している。東日本大震災と原発事故で失われた浜通り地域などの産業を回復するため、新しい産業基盤の構築を目指す福島イノベーション・コースト構想推進機構を伴走支するとともに同機構の「ビジネスアイデア事業化プログラム」に採択されるなど、取り組みを続けている。